漫談

 そうだった。

 この話、文化祭の漫談で聞いたことある話だ。

 面白いと思って、頭に残ってたんだよね。


 文化祭で漫談をしていた友達のことを思い出した。

 彼女の名前は、あやか。

 クラスのムードメーカーで、いつも笑顔でみんなを楽しませてくれる子。


 文化祭の日、私はあやかの漫談を見に行ったんだよね。

 彼女は、一人で舞台の上に立って、スポットライトを浴びていた。

 そこで、自分の日常や趣味や恋愛などをネタにして、笑いを取っていた。

 人を傷つけない感じで、単純に友達と話す感じの語り口だったんだけど、私は話に引き込まれて、思わず声を出して笑ってしまった。

 彼女の漫談は、とても自然で、親しみやすくて、面白かったの。



 その話と同じような話を、今聞かされてる。


「……っていうことがあってね、とても面白くてさ」

「それそれ! ‌思い出したよ。あやか、すごかったよ。漫談、めちゃくちゃ面白かった。それって、どうやって考えたの?」



 あやかは一瞬あっけに取られたが、嬉しそうに笑って、私に答えてくれた。


「そう? ‌ありがとう、奈緒なお。漫談楽しかった? ‌ネタはね、普段の生活で気づいたことや、面白いと思ったことをメモしておいてるだけだよ。それを思い出して、あらためてまとめてね。一応ね、漫談の本とか動画とかも参考にして、話す順番とかは工夫してるけれどね」


 自然体に見えたけれど、やっぱり影では、すごい努力してるんだな。


「すごいね。漫談って、そんなに大変なんだね。でも、あやかは、天才だよ。あんなに笑わせることができるなんてさ」


 あやかは、恥ずかしそうに首を振った。


「いやいや、天才じゃないよ。まだまだ未熟だよ。漫談って、奥が深いんだよ。笑いのセンスやタイミングや表現力や話術など、いろいろな要素があって、それをバランスよく使わないといけないんだよ。だから、もっともっと練習しないとね」


 あやかの謙虚さも、笑いに繋がってるのかもな。

 常に向上を目指して。すごいな。


「あやか、すごいね。漫談に対する情熱がすごいな。私も、あやかの漫談をもっと見たいな」


 あやかは、嬉しそうに私の手を握った。


「奈緒、ありがとう。そう言ってもらえると、うれしいよ。じゃあ、今度、私の漫談を見に来てよ」


 私は、あやかの笑顔に心が温まった。


「うん、約束だよ。あやかの漫談、楽しみにしてる! ‌今度はいつやるの?」

「次はね、クリスマス会でやる予定だよ! ‌私もなんだか売れっ子みたいで嬉しいよ」


 すごいな。

 あやかみたいに、頑張ってる人ってやっぱりみんなに認められていくよね。


 すごいな。

 私も憧れちゃうな。

 そんなことが、私も出来たら楽しいかもな。



「奈緒、今度さ。私と一緒にやってみる?」

「え? ‌私? ‌私は見てるだけの方が……」


「大丈夫だよ。いつも私と話すみたいにしてれば良いだけだからさ。漫談好きでしょ? ‌私は奈緒と話してるの好きだよ!」

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