御事納め
塾での授業が終わって、教室でくつろぐのが私の安らぎだったりする。
一日の仕事をやり終えたって感じがして、一番良い時間なんだよね。
私も
すっかり気が抜けて、机に突っ伏している。
「ねぇ、
「なにそれ? 何かが納められるの?」
隣で机に突っ伏してる状態から私の方に顔だけ向ける美穂。
「そうそう、一年のうちで農作業が終わるっていうことらしいよ」
「そうなんだ。……えぇ? もう終わっちゃうの? まだ12月が始まったばかりだよ。もう終わっちゃうなんて、それは早いね」
「そうだよね。もう終われるんだったら、そんなに嬉しい事は無いよね」
美穂は、今日の塾のテストを取り出して見つめ始めた。
今日のテストは難しかったんだよね。
いつもちゃんと勉強をしてたとしても、全部を正確に覚えてないと合格出来ないテスト。
美穂もダメだったけど、私もダメだったんだ。
浮かない顔をする美穂。
私も多分、同じ顔になってる気がする。
「私たち、もうちょっと頑張らないとだよね。受験近いもんね。受験生に休んでる暇は無いよね」
「そうそう。私たちが休むのは、受験が終わるまでお預けだよね」
美穂は、机に突っ伏したまま頭を横に振り出した。
「やだやだやだやだー! 休みたいーー!」
なんだか、ストレス溜まってるなぁ、美穂。
……それは私もか。
……うぅ。
私もやだな。
「やだやだやだやだー! 私もーーー!」
一緒になって、机に突っ伏したまま頭を横に振る。
しばらくガタガタと机が鳴った。
――ガタガタ。
――ガタガタ。
――。
疲れたのか、美穂は頭を振るのを止めた。
それに合わせて私も止めた。
同じ体勢のまま、顔を見合わせる。
「たまには休みたいね……」
「そうだよね……」
――。
しばらく沈黙の時間が流れる。
休めないっていうのは私も美穂も知ってる。
ただでさえ、勉強の成果が出てないのに。
――ガラガラ。
「おーい、そろそろ帰れよー。もうすぐ塾閉めるぞー」
講師の先生が入ってきた。
私たちの言っていたことを聞いてたのか、話しに混じってきた。
「御事納めはちゃんとしないとダメだぞ。いつもの仕事は休んで、神事が始まるんだ」
先生は、真面目な顔で言ってくる。
「通常の仕事は御事納めだけど、神事は御事始めって言うんだ」
「「へぇー」」
私と美穂は答える。
先生は少し笑い始めた。
「今日で通常授業は御事納めして。明日からは冬だけの特別メニューを始めるか」
「「えぇーー」」
先生は教室の電気を消していった。
「大丈夫。頑張ってるお前たちは、他のやつらと違って受かる可能性が高いからな。明日からまた頑張ろうな!」
先生は、部屋を出て行ってしまった。
「御事納めか。切り替えのきっかけになって、いいのかもね。そういう考えも好きかも」
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