紙芝居

「紙芝居を作って、友達に話してあげる? 何で私がそれをやらなくちゃいけないの?」


 高校二年生の冬。

 もちろん私は、愛しの人と過ごす予定。


 パソコン画面の前にケーキを並べてお祝いするの。

 二次元から出て来れないキャラだから、ケーキは私が代わりに食べてあげるっていう。

 そんな私の幸せなひと時がある予定なのですが。


「私のお姉ちゃんだから。やってもらいたいです」


 小学生3年生の妹。

 その割にはすごくしっかりしている。


 どうやら、友達を呼んで、うちでクリスマスパーティーをするらしかった。

 お父さん、お母さんには、しっかりとネゴ取ってるし。

 むしろ、友達の親にも交渉して、集金して、大きなケーキを買う予定を立ててるらしい。

 私の妹ながら、将来恐ろしいな……。


「お姉ちゃんは、紙芝居係だからね」


 そんな妹が私に言ってくるのだ。


 今時、紙芝居って……。

 もっと、他の楽しみ方があると思うんだけれども。


 仕切り屋の妹は、クリスマスパーティーのスケジュールも全部決めているらしい。


 ~~~~~

 ◆第一部

 ゲーム①(リズムゲーム!)

 ゲーム②(アクションゲーム!)

 クリスマスソングを歌う(練習済み!)


 記念撮影撮影(撮る係はお父さん)

 乾杯(事前にみんなの飲むもの調査済み)

 ケーキを食べる

 プレゼント交換


 ◆第二部

 紙芝居

 デザートタイム

 サプライズプレゼント

 ~~~~~


 私が見せてもらった、当日のプログラム。

 なんだか色々盛りだくさんで楽しそうに見えるけれども。


「これ、私の紙芝居っているのかな……?」

「もちろんいるよ!」


 イベント盛りだくさんだから、いらない気がするんだよな。

 なんか紙芝居だけ浮いてるし……。


「第二部のオープニングを飾る紙芝居だよ。これで、最後までの雰囲気が決まるんだからね」

「そんな大事なところだったら、なぜ私がやるの?」


「私が、お姉ちゃんが好きだから!」


 理由はよくわからないけれども。

 可愛い妹なんだよな。


 しょうがないから、作るか。紙芝居。



 そういえば、紙芝居って昔作ったことあるんだよね。

 妹が幼稚園の時に作ってあげたんだよな。


 どこだっけな?

 そう思って、押し入れを漁って、紙芝居を取り出してきた。

 サンタさんがやってくる話。

 沢山の子供にプレゼントを届けるために、サンタさんはこんなに一生懸命準備して、当日も時間を守ってるんだよっていうお話。


 当時の私は、見るアニメが多かったから、分単位でスケジュール立ててたんだよな。

 それをサンタさんと重ね合わせて書いたって言う、紙芝居だったんだけれども。


「あっ! お姉ちゃん! そのサンタさんの話。昔見たことあるよ。それをまたしてくれるの?」


 ……なるほど。

 妹は、これの影響を受けてしまっているのかな。


 きっちりしていることで、みんなを幸せにできるって思ってるのかもな。

 あながち間違ってもいないけれども。


 見せてもらったプログラムの最後に、サプライズプレゼントも用意しているみたいだし。

 自分の信じた道を、しっかり進んでくれているんだよね。


「じゃあまた、このお話の紙芝居を作ろうかな。これの続編!」

「やったー!私この紙芝居大好きなんだ」

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