マジック

 私は、手品が大好きだ。

 不思議でカッコいいものを見ると、心が躍る。

 でも、自分では全くできないの。

 だから、友達に手品を見せてもらうのが楽しみなんだ。


 その友達というのが、品川しながわさん。

 彼女は、奇術部に所属していて、いつも新しいトリックを考えている。

 私は、彼女の手品を見るたびに、驚きと感動を覚える。

 それで、彼女は、私にだけ、手品のネタばらしをしてくれる。それも、嬉しいことなんだ。


 今日も、放課後に奇術部に遊びに行った。


田町たまちさんは、もう奇術部に入ればいいのに」

「いえいえ。私は見る専門です。見てるのが楽しいの」


 品川さんは少し呆れながらも、嬉しそうな顔をしている。


「じゃあ、今日はすごい手品を見せてあげるよ」

「楽しみ!」


 今日もワクワクだね。

 期待で胸が高鳴った。


「じゃあ、始めるね。まずは、このカードを見て」


 品川さんは、トランプのカードを一枚取り出して、私に見せた。

 ハートのエース。



「これを、こうやって、手のひらに乗せるんだよ。そして、もう一枚のカードを、こうやって、上からかぶせるんだよ。で、こうやって、手のひらをひっくり返すと……」


 品川さんは、手のひらをひっくり返して、カードを見せた。

 すると、ハートのエースは、スペードのエースに変わっていた。


「えっ!? ‌どうやったの!?」


 私は、目を見開いて、驚いた。

 そんな私の顔を見て、品川さんは得意げに笑った。


「これはね、カードの裏に、別のカードを貼ってあるんだよ。だから、手のひらをひっくり返すと、カードが変わったように見えるんだよ。簡単だよね」


「えー、そんなことで!?  ‌でも、よく見ても、カードの裏に貼ってあるなんて、わからないよ」


 私は、カードを手に取って、よく見た。確かに、カードの裏には、別のカードが貼ってあった。でも、それが見えるのは、カードをひっくり返したときだけだ。普通に見たら、普通のカードにしか見えない。


「それはね、人の錯覚を利用してるんだよ。これは、手品の基本だよ」


 品川さんは、カードの裏を指さして、説明した。私は、納得した。


「なるほどね。でも、それでも、すごいよ。私には、思いつかないよ」


 私の言葉に、品川さんは嬉しそうに笑った。


「ありがとう。でも、これは、まだ序の口だよ。次は、もっとすごい手品を見せてあげるよ」


 品川さんは、カードをしまって、別の道具を取り出した。それは、紙とペンだった。


「これはね、私が考えたオリジナルの手品なんだよ。まずは、この紙に、好きな数字を書いて」


 品川さんは、私に紙とペンを渡した。私は、好きな数字を書いた。それは、7だった。


「で、この紙を、こうやって、丸めるんだよ。そして、田町さんの手に渡します」


 品川さんは、私に紙を丸めさせて、手に受け取った。そして、紙を握りしめた。


「じゃあ、ここからが本番だよ。私は、この紙に書かれている数字を、読み取ることができるんだ。それも、紙を開かないでね。さあ、どうなると思う?」


 品川さんは、私に質問した。


「えっ、本当に分かっちゃうの? ‌どうやって?」


 品川さんは、にやりと笑った。


「それはね、秘密だよ。でも、見ててね。私は、この紙に書かれている数字を、言えるんだよ。それはね……」


 品川さんは、紙を握ったまま、目を閉じた。

 そして、しばらく沈黙。


 私は、ドキドキした。


「……7だよ」


 品川さんは、目を開けて、答えた。


「えっ!?  ‌本当に!?  ‌どうやってわかったの!?」


 品川さんは、嬉しそうに笑った。


「また来てくれたら、来てくれたら教えるね!」


 私はいつも、品川さんのマジックにかけられてるのかもしれないな。

 こう言われると何回も来ちゃう。


「これは、また来るしかないじゃん。私、マジック好きだもん」

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