焼肉
駅前にある、いつも美味しい匂いがしてくるお店。
通りかかるたびに、いつかこのお店に食べに行きたいなって思ってた。
けど、値段が高いんだよね。
小さい頃からそう思っていたお店。
今日、初めて来られたのです。
ちょっと高級な焼肉店。
家族では絶対来れなくて。
バイトをしてお金を貯めて。
あと、ちょっとだけ、彼氏に奢ってもらって。
……えへへ。
肉の日で、すごく安いっていうし。
そうだとしたら、今日しか食べに来れないなって思ったんだもん。
来年になったら、独り身になってるかもしれないし。
彼氏は、バイト先の先輩の送別会っていうので一度来たことがあるらしかった。
だから、『サービス券』って言うのをもらってるらしいんだ。
優しいことに、サービス券で浮いた分を、私に奢ってもらうんだ。
せっかくなら全部奢ってよとは、思っても、言えないかな……。
そういうのも言い合える仲にならないとだよね。
今日でもっとお近づきになれるといいな。
お店に入ると、彼氏は自分の行きつけの店みたいに「おひさしぶりです」って言ってた。
まだ二回目でしょって思うけれども。
まぁいいか。
席に着くと、ちょっと広めの席だった。
ココのお店って、大人数で来るところなのかもしれない。
そこに、二人きりで来るなんてね。
なんだかリッチな気分。
目の前の彼も笑顔になってる。
お調子者なところがあるのが、玉にきずだけどね。
喋らない人よりかは、楽しませてくれようとしているから良いかなって思う。
盛り上げようっていう気持ちが、私は好きなんだ。
「今日は、何でも食べていいよ!」
「そうだね。食べ放題だからね」
「ははは」
彼が注文パットで注文をしてくれる。
私は勝手がわからないから、色々とやってくれるのいいな。
「ドリンクは、あっちに行ったらあるからね。トイレはあっちにあるから」
私は、彼におんぶにだっこ。
楽で助かるんだけれども、私も気を使っちゃうんだよね。
ドリンクを持ってきて、食べる準備をしていると何やら機械がこちらに向かってきた。
「あれ、猫さんの形してる可愛い!」
笑いながら、彼が注文した肉やら野菜を取ってくれた。
テーブルの上に沢山の皿が並ぶ。
なんだかこれだけで満たされている感じがするな。
せっかく焼肉屋さんだし、まずは肉を食べたいな。
そう思ってると、彼が早速焼きだした。
「すぐに肉を食べたくなるだろうけど、野菜も一緒に食べような」
「えー。肉だけじゃダメなの?」
「肉だけでも良いけど、飽きてきちゃうんだよ。一番おいしく肉を食べれるのは、野菜を一回挟むことだと思うんだ」
一生懸命肉を焼く彼。
私が違うかもって思う事でも、実は色々とその先まで考えてくれてるんだよね。
奢ってくれないのも実は、考えがあるんだろうな。
焼いてくれた野菜と肉は、自分では取らずに全部私にくれていた。
「一番美味しいのは、網が汚れてない状態で焼いたやつだからさ。食べてみてよ。絶対美味しいから!」
全部、理由を言ってくれればいいのにね。
いつか聞いてみよう。
私は彼が取ってくれた野菜と肉を食べた。
確かに野菜と一緒に食べる方が、美味しいかも。
「ありがとう。野菜があってこそ、お肉の美味しさが際立つ気がする。この焼肉さんっていいね。私も好きになったよ」
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