発明

 発明ってすごいと思う。

 発明家って、どうやったらあんなに素晴らしいアイディアを思いつくのかな。

 私には、とてもできないことだ。


 私の友達の水野みずのさんは、発明が大好き。

 水野さんは、生活が便利になるアイディアをSNSで発信しているんだ。

 水野さんのアイディアは、いつも斬新で面白い。

 私は、水野さんの投稿を見るのが楽しみだったりする。

 こっそり見ては、『いいね』ってしているんだ。


 学校の帰り道。

 たまたま水野さんと帰りのバスが一緒になった。

 私の隣に座る水野さん。

 発明ばかりしてるけれど、普段は何を考えてるんだろうな?

 やっぱり頭の中は発明ばかりなのかな?


 水野さんを見つめていると、水野さんはこちらを振り向いてニコって笑ってきた。


「ねえ、花岡はなおかさんって、青色発光ダイオード知ってる?」


 水野さんが、私に話しかけてきた。

 私は、一瞬なんのことだろうって思った。

 そう思っている間に、水野さんの方から早口で喋ってきた。


「青色発光ダイオードって、発光ダイオードの一種で、青い光を出すんだよ。あっ、発光ダイオードって、電気を光に変える素子なんだけど、青色の光は、他の色よりも難しいんだって」


 私の頭の上には、クエスチョンマークがある。

 それをそのまま、水野さんへとぶつけてみる。


「なんで難しいの?」


 そうすると、水野さんはにっこりと笑って、言葉を続けた。


「だって、青色の光は、波長が短くてエネルギーが高いから、素材が特殊でないと作れないんだよ。でも、日本人の研究者が、窒化ガリウムっていう素材で青色発光ダイオードを作ったんだ。それが、すごい発明なんだよ。ノーベル賞も取ったんだよ」


 水野さんは、目を輝かせて喋ってくれる。

 水野さんの頭の中は、いつでもこんなことでいっぱいなんだな。

 私には付いていけないよ。


「青色発光ダイオードは、いろいろな使い方があるんだよ。例えば、青色発光ダイオードと赤色発光ダイオードと緑色発光ダイオードを組み合わせると、白色光ができるんだ。白色光は、照明に使えるんだよ。白色発光ダイオードっていうのがあるんだけど、それは、青色発光ダイオードがないと作れなくてね。白色発光ダイオードは、白熱電球や蛍光灯よりも省エネで明るいんだよ。だから、環境にも優しいんだよ」


 水野さんは、聞かなくても教えてくれる。

 私には何も理解できなかったから、そのまま返すしかないや。


「へえ、そうなんだ。すごいね。でも、私には、よくわからないや」


「大丈夫だよ。私も、最初はわからなかったんだ。でも、調べてみると、面白いことがいっぱいあるんだよ。発明って、知れば知るほど、魅力的になるんだよ」


 水野さんは、優しく言ってくれた。

 水野さんの目は、キラキラと輝いていた。

 まるで、青色発光ダイオードのように、美しく。


 水野さんって、こういう事を考えてるから、色々思いつくんだろうな。

 発明家みたい。


 話し続ける水野さんの目の色は、輝き続けていた。


「私、やっぱり発明って好きなんだよね」

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