良い笑顔
休日のショッピングセンターって、なんだか良いよね。
私自身が、子供だったころを思い出したりするよ。
小学校入学前くらいの小さい頃。
あの頃は、毎日が休みみたいなものだったな。
いつも楽しかったな。
あの頃持ってる、魔法少女の応援ライト。
映画を見に行ったらもらえて。
ずっと鞄につけてるんだよね。
私は、子供心を忘れない大人になるんだって思うんだよ。
ずっと楽しかったあの時を思ってね。
……いや、今も楽しいんですよ。もちろん。
試験勉強とかね、部活での悩み事とかがあるっていうだけです。
中学二年生っていうのは、意外と忙しいんですよ。
……まだ子供じゃんって言われてしまうと、もう大人ですよって言い返します。
二次性徴っていうやつを知らないんですかと。
そうかそうか。それだと、恋にも忙しい時期だよね。
……とか言われてしまうと、それについては、笑ってごまかすしかないですけれども。
はははは。
彼氏募集中って、頭の上にウィンドウ出しておきたいよ。
ふらふらと歩いて、エスカレータに乗って上の階を目指す。
なんの買い物も無いのに、一人でショッピングセンターをうろつく中学生なんて、私くらいなんじゃないですかね。
けど、ウィンドウショッピングという言葉もあるから、私は今ショッピング中なのかも知れないです。
脳内で繰り広げられる会話が多いのは、ボッチの証。
一人っ子って、そういうところあるよね。
そんな風に脳内会話をしながら、エスカレーター登り切ると、泣いてる女の子が目に入った。
きっと、迷子の子だ。
魔法少女のアニメで見たことがあるポシェットを肩から下げていた。
きっと、年少さんくらいかな。
「うぇーーん。お母さーん、どこー?」
泣いている子に対して、誰も見向きもしていないようだった。
世知辛いにも程があるよ。
私は、居ても立っても居られずに、女の子へ寄って行って話しかけた。
「大丈夫? お母さんとはぐれちゃったのはどのあたりかな?」
女の子は、一瞬こちらを見たが、泣きやみそうになかった。
うぅ。こういう時ってどうしたらいいんだろう……。
迷子センターに連れていくのが良いのかな。
けど、この様子じゃ話聞いてくれなそうだな。
……よし。
「私がさ、お母さんと会えるようにしてあげるよ。私ね、実はね、魔法少女なんだよ」
私がそう言うと、女の子は少し泣き止んで、興味を持ってくれたらしい。
「……本当? 変身できるの?」
「うん。そうだよ。敵が現れたら、私がやっつけてあげるからね。これで変身するんだよ」
鞄から取った、魔法少女の応援ライトを見せてあげた。
「すごい! お姉ちゃん本物だ!」
「ココだけの内緒だからね」
口に人差し指を当てて、し―ってポーズをして内緒っていうジェスチャーをした。
女の子も、同じようにしてくれた。
とりあえず、話を聞いてくれたから、このまま迷子センターに連れて行こうかな。
そう思ってキョロキョロしていたら、私の所に走って来る女性がいた。
「
「あっ! お母さん!」
特に何をするわけでもなく、すぐにお母さんの方から来てくれたようだった。
私の出る幕はなかったか。
現実で、私がヒーローになるなんてことは無いんだよね、結局。
ははは……。
「未来ちゃんっていう名前なんだね。お母さんに会えて良かったね」
私はそう言って、未来ちゃんの頭を撫でてあげた。
お母さんは、私の方を向いて頭を下げてきた。
「未来を見つけて下さって、どうもありがとうございます。助かりました」
「……いえ、私は本当に何もしていなくて」
「お母さん、このお姉ちゃんが助けてくれたんだよ! このお姉ちゃんね!」
なんだか、恥ずかしい言葉が続きそうだったので、私は未来ちゃんに再度、内緒だよという風に口に手を当ててウィンクをした。
「そうだった。とにかく、お姉ちゃんが助けてくれたんだよ」
「そうなのね。本当にありがとうござました」
これ以上長引くと、辱めに合いそうな気がする。すぐに立ち去ろう……。
「未来ちゃん、もうお母さんとはぐれないんだよ?」
「はい! ありがとうお姉ちゃん!」
未来ちゃんは、お母さんと手を繋いだ。
それとは逆の方で、私に向かってバイバイと手を振ってくれた。
とっても良い笑顔。
やっぱり笑顔っていいな。
私もあんな風に、また笑って過ごせるかな。
……過ごせるかなじゃなくて、過ごそう!
良い笑顔を貰えるっていいね。もらったこちらまで明るくしてくれる。
大好きだな。
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