ブラックフライデー
「えええ。お母さん、またお小遣い減らすの」
「あなたは、バイトしてるんだから、それで遣り繰りしなさい」
「えーー……。それは、お小遣い少ないから頑張ってるだけで……」
「色々値上がりしてるんだから、家計も気にしないとダメよ? もうすぐ大人になるんだし」
「いや、値上がりしているから、私のお小遣いも値上がりしないと、何も買えないよ!」
そんな私の抵抗もむなしく、お小遣いがまた削られてしまいました。
これじゃ、バイトを増やさないと、好きなものも買えないよ。
物の値段が上がっても、入ってくるお金が変わらなかったら買いたいものも買えないし。
入ってくるお金が下がってしまったら、根本的に生活の質を下げるしかない。
そんなことは誰もが分かることです。
私は、どう生きればいいのっていう感じじゃん……。
物を長く使えってことなのかな。
SDGsっていうやつか……。
うぅぅううぅぅ……。
けど、色々欲しくなる一……。
お小遣いが減らされたっていうのに、バイト終わりに駅前の百貨店に寄ってしまった。
けど、ファッションは、女子高生の楽しみの一つだし。
ふらふらと来た百貨店の中を歩いていく。
クリスマスに向けて、色々売り出している。
あ、これは欲しかった奴だ。
ちょっと安くなってるじゃん!
けどな……。
お小遣いも減っちゃったし。
ここは我慢が必要だな。
よし! 我慢しよう!
私ったら、良い奥さんになれるかもな。
ふふふーん。
歩ていると、色々と商品が目に入る。
それも、ウィンドウショッピングの楽しみ。
あれ?
これは
こっちも、なんだか安くなってる。
ラッキーじゃん。
せっかくだから、プレゼントしようかな。
けど、うーん……。
自分に使うんじゃないからね。
明日香が喜ぶ顔が見たいもんね。
商品を取ろうとすると、後ろから声をかけられた。
「あれ、
振り向くと、そこには明日香がいた。
あらら。
ここで買ってるのが見られちゃったら、ダメじゃない。
安売りしてたものをプレゼントされるって、ちょっと嫌な気持ちにさせちゃうかも知れない。
どうやってごまかそうか考えていると、明日香は何かを体の後ろに隠した。
「あれ? 明日香、何か隠した?」
「いや、そんなこと無いよ」
うーん。なんか、怪しい。
まぁ良いか。
あ、私は見られちゃってるな。
正直に言おう。
「明日香、これ欲しいって言ってたなーって思ってさ。プレゼントしようかなとか思ったけれども。あはは、見られちゃった……」
私と明日香の仲だからね。
隠し事が出来ない私は、早めに正直に言っちゃうようにしてる。
私が素直に言うと、明日香は嬉しそうにして答えてくれた。
「金額とかじゃないよ。気持ちが大事だって思うよ。私の事考えてくれたんだね。ありがとう」
……良かった。
安くなっちゃってたのが、逆に迷惑かと思ったけれど。
明日香が良い子で良かった。
「私もさ。ちょっと安くなっちゃってるけど、これ華穂にあげようかなって思って」
「ええ、それ、さっき見たやつだ! 全然安く無いよ! むしろ明日香へプレゼントしようとした、これよりも高いじゃん」
「さっき言ったじゃん。金額とかじゃないんだよ。気持ちが大事ってこと」
明日香は笑って答えてくれた。
「……これも、結構安くはなってるんだよ?」
私は、明日香とどれくらいお得になってるかを計算して、笑いあった。
お金が無くても、誰かと過ごすって、楽しめるね。
このセールがあったからこそ、私達は互いにプレゼントを贈ろうと思えたのかも知れないね。
このセールって、『ブラックフライデー』っていうらしいんだ。
私は、このセールが大好きだな。
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