勤労感謝の日

 祝日があると、なんだか嬉しい。

 いつもの土日と違って、週の中に休みの日ができるんだよ。

 何しようかなってなるよね。


 何しようかな。

 前日に考えておけば良かったな。


 朝は、いつも通りの時間に目覚めてしまったけれども、ベットの中でゴロゴロとしている。

 友達と遊ぼうにも、いきなり誘っても難しいよね。

 今日は大人しく家でのんびりしていようかな。


 そう思いながら、ベッドの中でスマホをいじりながらのんびりしていた。


 いつもだったら、休日でもお母さんが起こしに来るのにな。

 なんでか今日は来ないな……。

 何でだろう。


 けどお腹空いたしな……。

 ベッドから出て、リビングへと向かったが、そこには誰もいなかった。


 ……あれ?

 今日って平日じゃないよね?


 お父さんもお母さんもいないのかな?

 どこか出かけちゃったのかな?

 私に声もかけずに?


 色々と不安があったので、お父さんとお母さんの寝室へと行ってみた。


「お父さん、お母さんー。いるー……?」


 寝室に入ると、二人ともぐっすりと寝ているようだった。


 あら?

 いるじゃん。


 どうしたんだろう。

 二人共、体調でも悪いのかな?


「お父さん、お母さん、大丈夫? 体調悪い?」


 そう聞くと、ゆっくりと目を開けた。


「あぁ、おはよう紗栄子さえこ。今何時?」

「今はもう九時だよ?」


 それを聞いても、のんびりと起き上がる二人。

 今日は、気が抜けちゃってるんかな。

 そういう日があってもいいか。


 毎日、毎日仕事ばかりで、残業も多いみたいだし。

 疲れちゃうよね。

 私のため、家族のために頑張ってるんだもんね。

 すごく偉いって思う。

 たまには、ねぎらってみても良いかもな。



「お父さん、お母さん。いつもお仕事ご苦労様。今日は私が朝ごはんを作るよ! 何が良い?」


 お母さんは、眼鏡をかけてこちらを向いてにっこりと笑った。


「紗栄子にしては、気が利くー。ありがとう。今日が何の日か分かってる感じかな?」


 何の日かって……。


 何の日だろう。

 祝日っていうのは知っているけれども、何の祝日だっけ……?


 お父さんも眼鏡を付けて、こちらを向いた。

 少し驚いた顔を向けてくる。


「もしかして、知らなかったりするのか?」

「……えへへ。わからないや。今日って何の日だっけ?」


 お父さんとお母さんは、顔を見合わせて笑い出した。

 知らないことって、そんなにダメなことなのかな……。

 ちゃんと覚えておかないと……。


「紗栄子、今日はね、勤労感謝の日と言って働いている人に感謝をする日なんだ」

「そうそう。だから、私たちに感謝してくれてるのかと思ったら、そうじゃなかったんだって」


 お父さんとお母さんは、私が常識知らずっぽいのに笑ってくれていた。


 勤労感謝の日、ちゃんと覚えておかないと。

 来年は、ちゃんと覚えて感謝しよう。


 ……けど。

 朝から寝坊も出来て、お父さんお母さんも楽しそうだから、良いか。

 私はこの日が好きかも知れないな。

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