毛布

 十二月が近くなってきて、急に寒くなってきた。


 私はいつも朝まで快眠なのに、昨日は夜中に目が覚めちゃった。

 寒すぎて起きちゃったの。

 そこから寒くて全然寝れなくて。

 しょうがないから、上着を着てみたり、靴下を履いてみたりして。

 どうにか暖かくしたら眠れたけれども。


 今日もそれだと困っちゃうな。



「……ふぁーー」



 思わず、大きなあくびをしてしまった。

 気が抜けてる証拠かも知れないな。


 ふと隣の席を見ると、由紀子ゆきこが私のことを見ていた。


「めずらしく、今日は眠そうだね?」

「わかる? 昨日寒くて全然寝れなくてさ」


 由紀子の表情が少し険しくなった。

 心配してくれる時は、いつもこういう顔をする。

 友達思いの良い子。


「暖かい布団を出した方が良いよ。私も昨日布団を増やしたよ。さすがに寒くてさ」


 心配してくれる、由紀子の気持ちって暖かいな。


「そうだね。今日は、暖かくしていっぱい寝るよ。心配してくれてありがとう」


 私がそう言うと、由紀子は満足そうな笑顔に戻ってくれた。


 今日の夜は、昨年使った毛布を出してこようっと。



 ◇



 うぅ……。


 なんで、私の毛布はカビてしまっているのているの……。

 せっかく昨年のやつを探して、やっとの思いで見つけ出したと思ったら、使えないっていう……。


 これは、私の日頃の行いが良くないっていうことかな……。


 毛布は諦めて、もこもこに着込んで、ベットに来たけれども。

 今日はちゃんと寝れるかな。


 はぁ……。



 案の定、寝にくい……。



 こんな着込んだら、逆に暑いし。

 寝付けないよ。


 けど、脱いだら寒いし。


 私の部屋に、暖房ぐらい付けてもらいたかったな……。



 ――コンコン。


 ノックとともに、部屋に入ってきたのはお母さんだった。


弓子ゆみこ? ちゃんと寝れてる?」


 私は、ベッドの上で寝転がったまま答える。


「全然寝れないよー」

「ごめんね、お母さんの保存の仕方が悪くって……」


「大丈夫、お母さんが悪いわけじゃないよ。誰も悪くないんだよ。確認してなかった私も悪いし」



 私の姿を見かねたお母さんは、私に優しく言ってくれる。


「弓子、たまには一緒に寝る?」

「いや、中学生にもなって、親と一緒に寝るなんてなんか恥ずかしいよ」


「けどさ。緊急事態だと思ってさ。おいで」


 そう言って、部屋を後にするお母さん。


 みんな、私のことを心配してくれる。

 優しさは暖かいって感じるけれども、それじゃあ身体は温まらないんだよ。



「早くおいでよ」


 お母さんが急かしてきたので、お母さんの寝室へと行くことにした。

 着込んだ服は、脱いでいこうっと。



 ……寒い。


 急いでお母さんの部屋へ行くと、お母さんの布団の隣にもう一つ布団が敷かれていた。

 小学生まで私が一緒に寝てた時の布団。


 懐かしさがこみ上げてきて、少し固まってしまった。


「弓子、止まっちゃってどうしたの? これは大丈夫よ。カビてないの確認したわよ」

「……ありがとう」


 久しぶりの布団からは、懐かしい匂いがした。

 私も一昨年までは、お母さんと一緒に寝てたんだよね。


 自分の部屋から持ってきた薄い掛け布団の上に、お母さんの毛布を一緒にかけてもらう。

 なんだか、懐かしい感じがする。


 毛布が暖かいっていうのもあるけれど、お母さんが暖かかった。


「どう、暖かい? これで寝れるでしょ」

「うん。ありがとう」


 なんだか落ち着くし。

 たまにはこういうのも良いかもしれないね。


 やっぱり、お母さんと寝るっていいなって思う。

 ……そんなこと、恥ずかしくて、絶対に誰にも言えないけれど。


「お母さん、暖かいよ。これで、ぐっすり寝れそう。……別に、お母さんの隣が暖かくて良いってわけじゃないからね。この毛布が好きだなって思ってるだけだよ!」

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