良い色

今日も、私のネイルは完璧です。

メイクもばっちり。


やっぱり、色合いが大事だよね。

目元は、今年の秋色を意識してブラウン系統。

口元は、ちょっと際立つ赤色が強め。

プルンと光らせて。


鏡の前で、自分の顔を見てみる。

うんうん。

決まってる。


カラフルなものに囲まれて。

これが良いよね。


決まったメイク姿の自分が鏡の前で笑う。

超かわいい。


道行く人が振り返ってくる気分。

電車の中でも、サラリーマンが私のことをちらっと見てくる気がするし。

気分いいな。


そんな気分でいると、同じクラスの遠藤えんどうさんがいた。

ナチュラルなメイク姿。


あれ……? ‌なんだか、可愛い。


「あ、遠山とおやまさん、おはよう。今日もメイク決まってて可愛い」

「そ、そう? ‌ありがとう」


私から見たら、ナチュラルなメイクの遠藤さんの方が可愛く見える。


私と同じく、今年流行りのベージュ系統でまとめてる。

一見、地味に見えるけれども、とても大人に見えた。


「私も、遠山さんみたいにカラフルになりたいな。とっても可愛いよ」


遠藤さんの、はにかむ笑顔がとても可愛かった。


ネイルなんてつけていないけれども、丁寧に手入れされた爪先。

気付かないくらい、うっすらと染めた茶髪。

それとぴったり合うような、茶色がかったセーターを着ている。


今までの私が間違ってたとは思いたくないけれども。

私もこうなりたいなって思ってしまうくらい、可愛い。


「あのさ、遠藤さんってさ、どういうところに服を買いに行ったりするの?」

「私? ‌それよりも、遠山の方が気になるよ」


「いや! ‌遠藤さんの方が気になる!」


ついつい、強めに言ってしまった。

それでも笑って返してくれる。


「えー? ‌私なんかにも興味を持ってれるの嬉しいな。これはね……」


嬉しそうに語る遠藤さん。

私が全然行ったことが無いお店の名前が挙げられた。


私が興味津々で聞いているとわかったのか、遠藤さんも楽し気に色々と教えてくれた。


使っている化粧品のことや、見ているファッション雑誌。


私なんかよりも、ずっとずっとファッションについて考えていて。

何だか、自分は情けないって思っちゃうな……。


「遠山さんは、遠山さんだよ。カラフルなのとっても似合うもん。私はさ、こんな地味顔で、地味な性格だからさ。選択肢が無いんだよね。遠山さんのファンションも教えて欲しいな」


その人に合うファッションっていうのが、あるものだよね。

それを知ってるって、やっぱり遠藤さんは大人だな。


「私、遠山さんの選ぶ色、良いって思うよ。毎日カラフルで見ているこっちも楽しくなっちゃう。良い色。私好きだよ」

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