のど飴
「ごほっごほっ」
今日はなんだか咳が止まらない。
朝からずっとこんな調子。
「ごほっ、ごほっ、ごほっ、ごほっ……」
あまりにも咳が止まらない私の事を先生が心配してくれた。
「大丈夫か?
私は咳込みながら、頷いた。
「じゃあ、保健委員が連れて行ってやってくれ」
先生がそう言うと、
「俺、保険委員だっけか?」と言ってとぼけながら。
保健室についても、保健室の先生はいなかった。
トイレにでも行ってるのかな。
少し待つしかないか……。
竹内君は、私のことを心配してくれてか、そのまま保健室にとどまっていた。
「宮内、咳辛そうだな。そういう時は、のど飴食べると良いよ」
そう言って、竹内君はのど飴をくれた。
いつも持ち歩いているのかな?
せっかくもらったので、舐め始めると少し咳はおさまってきた。
「保健室の先生どこいったんだろうな?」なんて言いながら、竹内君はずっと傍にいてくれ。
竹内君の優しさが嬉しかったけれども、風邪をうつしてしまわないか急に不安になってきた。
私は、絞り出すようにして声を出した。
「……風邪がうつっちゃうかもしれないから、あまり私の傍に寄らない方が良いよ」
私が絞り出した声でそう言うと、竹内君は笑って答えてくれた。
「大丈夫だよ。風邪ひいてるやつなんか心配されたくねーよ」
竹内君は、笑顔で続けた。
「俺バカだからさ。昔から、風邪って引かないんだよな。だから気にするな」
そうなんだ。
竹内君って、なんだか優しいな……。
「そうだ。宮内ってさ、吹奏楽部じゃん? 喉痛くて練習できないの辛いだろ」
私は声が全然出なかったので、ゆっくりと頷いた。
けど、練習できないのは、しょうがないよ。
風邪をひいてしまった私が悪いんだもん。
「これ全部やるよ」
私に向かって何か投げてきた。
相変わらず、ぶっきらぼうな竹内君。
「……これ、さっきの、のど飴?」
「そう。俺が良くなめてるやつなんだ。甘くて美味しかっただろ? もしかしたら、それ舐めてるから、俺は風邪ひかないのかもな」
風邪なんてうつらないって強がって、さっきまでこっちを向いていたのに。
竹内君は、急に私に背中を向けていた。
「……何で、そっち向いちゃうの?」
「いやさ、なんか顔が熱くなっちまって。保健室って、なんか暑いんじゃね?」
実際には、そんなことはない。
きっと恥ずかしくなって顔が熱くなったんだ。
竹内君って、そういうところもあるんだよね。
恥ずかしさがおさまったようで、こちらに向いてきた。
「何でもいいから、早く元気になれよな」
真面目な顔で、そう言ってくる竹内君。
私は、その優しさが嬉しかった。
いつも、私のことを心配してくれる竹内君。
前々から、ちゃんとお礼が言いたかった。
今の私の気持ちも添えて……。
「……ありがとう竹内君。私好きだよ」
私がそこまで言うと、竹内君はまた顔を背けてしまった。
……ふふ。
竹内君、ちゃんと全部聞かないから恥ずかしがっちゃってる。
ちょっとだけ、竹内君をからかう気持ちもあったけれども。
ちゃんと全部聞いてくれないとダメだよ、竹内君。
「……何でそっち向いちゃうの? 私、好きだよ。竹内君がくれた、のど飴。甘くてとっても美味しいよ。ありがとう」
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