ネッシー
未確認生物。
Unidentified Mysterious Animal、通称UMA。
和製の造語だけれども。
皆にも通じるから、その言葉を使うね。
例えば、『ネッシー』って言っても通じる。
ネス湖にいる首長の恐竜みたいに言われてる、あいつ。
私は絶対にいると思ってる。
人類に解明されていない、謎のひとつ。
そういう生物の目撃例もいっぱいあって。
誰も『存在しない』とは、証明出来てないんだ。
だから存在する可能性はゼロじゃない。
可能性がゼロじゃないなら、いるって信じてても良いじゃないね?
「あなたも、そう思うでしょ?」
部室の片隅で読書してる
豊春は、いつも部室には来るんだけれど、読書ばかりしている。
それが、この部活動とも呼べなくもないけれども。
豊春が読んでるのは、毎回ミステリー小説。
やっぱりなんだかんだ、私たちはミステリーが好きなんだ。
ここは、ミステリー研究部だから。
私は聞いていない豊春に向かって、もう一度言う。
「豊春、今日はネッシーが初めて発見された日なんだよ! だから、私達もネッシーの謎について語って、それで研究レポートをまとめるっていう日でしょ? それしないと、今月の部活レポートまとめられないんだから、手伝ってよ」
そこまで言っても、豊春は読書に夢中だった。
「豊春、ちゃんと参加してよ!」
「んっ……? あー、ごめんごめん。聞いてなかった。俺もネッシーが好きだよ。首長い所がチャームポイントだよね」
豊春は本から目を離さずに、答えてきた。
答えてる途中でも、ページをめくる豊春。
全然話聞いてないし、適当にも程がある受け答え。
さすがの私も、我慢の限界だよね。
また、あれをやるしかないな……。
豊春の横まで歩いていき、耳元へ近づく。
豊春は小説から目を離さないが、少し警戒していた。
「なになに、大声とか出さないでよ? 暴力反対だよー? 鼓膜破れちゃうと、治療費意外と高いからねー?」
いつも煽ってきて。
私は野蛮じゃないから、そんなことはしない。
非暴力主義だからね。
問題解決は、力をかけずに効率的に終わらせることこそが、正義。
豊春の耳元で囁く。
「……その小説、犯人は親友の女の子だよ。ずっと主人公のこと恨んでたんだ。それで、犯人の子も最後死んで終わるんだよ」
そこまで言うと、豊春はやっと本から目を離して私の方を見た。
「……って、おいっ! 今面白く読んでるのに、この小説の犯人とか言うなし。それも、最後のオチまで言うんじゃねぇよ!」
私は豊春から、小説を取り上げた。
「はーい。これで、読む理由が無くなったから、部活動しましょ」
これが、平和的解決。
豊春も小説のオチを効率的に知ることができたし、尚且つ部活動の時間も確保出来る。
一石二鳥ですよね。
「あー……。もう……。またかよ、ちきしょう……」
「豊春は、まだ私が読んでないミステリー小説を読むべきだったね。今まで何回もやってるのに、豊春は学習しないなー?」
そんな私と、豊春の二人のミステリー研究部。
今月の活動は、ネッシーについての研究レポートを出す活動。
私は、豊春が言いたそうなことを付け足して言ってあげる。
「豊春のネッシーに対する意見は、採用しておくね。私もネッシーが好きだよ。誰にも、解明されてない謎っていうところが良いでしょ? だから、ネタバラされなくて済むしね」
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