縁結び
今日は、神社に縁結びに来たんだ。
私は、ずっと好きだった彼に告白したくて。
でも、勇気が出なくて、いつもチャンスを逃してしまう。
話しかけようとしても、声が出なくて……。
だから、神様にお願いしようと思ったんだ。
縁結びのお守りを買って、彼との縁を結んで貰いたい。
こんな他力本願だから、上手くいかないのかな……。
お守り売り場は空いてたので、カウンターへとすぐに進めた。
「あの、すみません。縁結びのお守りを一つください」
「こちらですね。500円になります」
500円で願いがかなえられるなら、安い安い。
私は、お金を払って、お守りを受け取った。
と、その時、私は思わず目を見張った。
売り子をしていたのは、私が好きな彼だったからだ。
「あ、えーっと……」
私は、驚いて彼の名前を呼ぼうとしたが、声が出なかった。
彼は、私を見て、笑った。
「あ、君は、えっと……あの……」
彼も、私の名前を呼ぼうとしたが、声が出なかった。
私の名前を知ってるはずなのに。
私たちは、しばらく無言で見つめ合ってしまった。
どうして、彼がここにいるのだろう。
彼は、神社の手伝いをしているのだろうか。
「あの、ごめんなさい。私、ちょっと友達に頼まれちゃってー……」
「あっ、そうなんだ。友達は縁が結ばれるといいね」
私はそう言って、お守りを受け取ると、そそくさとその場を離れてしまった。
お守り売り場が見えなくなったところまで来ると立ち止まって、深呼吸をした。
どうしているんだよー……。
凄い緊張したじゃん……。
ちょっと嘘ついちゃったし。
ここの縁結びのお守りは、効果あるって言ってたから、いきなり効いたのかな?
……そんなわけないか。
それにしても、このお守り可愛いな……。
ピンク色をしていて、刺繍が細かく入っている。
私がお守りを見つめていると、私に近づいてくる足音が聞こえた。
誰かと思ってみてみると、彼だった。
相当慌てて走ってきたのか、肩で息をしている。
「はぁはぁ……。ごめん……。さっきのお守りさ、二つで一組だったんだ……」
「あ、それのこと? 私一つだと思ってた……」
「これさ、特殊な縁結びだから片方は自分で持って、もう片方は意中の人に渡すんだ。そうすると、結ばれるっていう。そんなお守りになってる。そう、友達に言っておいて」
……私の嘘を信じてくれてる。
「友達の縁結びをしてあげようって頑張っているのに、そのせいで友達無くして欲しくないからさ」
……私の事を心配してくれてるんだ。
……やっぱり、本当の事を言わないと、後悔する。
「……そのお守りさ、実は私用に買ったんだ」
彼は、私の話を黙って聞いていてくれる。
「……まさかさ、縁結びをお願いしようとしたら、その本人が出てくるなんて思わないじゃん……」
私の一世一代の告白だったけれども。
こんな回りくどいことしか言えないよ、恥ずかしくて……。
彼からの返事が来るまでの間、時が止まったように感じる。
顔なんて、見れないし……。
「……そしたらさ、こっちの青い方のお守り、俺が貰ってもいい?」
返事が来たから、思わず彼を見てしまった。
夕焼け空のせいなのか、彼も頬を赤らめて。
こっちを見れずに、空の方を見上げていた。
縁結びって、本当にあるんだね。
思わぬことが連続して、私もなんて喋らばいいか分からなくて、空を見上げた。
茜色の空。
私と、彼の顔の色が空にも伝染してるみたいで。
「このお守りって、鞄に付けたらいいのかな……?」
「そしたら、俺も付ける……」
二人共、空を向いて会話する。
なんだか、おかしいのは分かっているけど。
この時の茜空は、私の思い出の一ページに鮮明に残ってる。
縁結びって良いよ。大好きだよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます