ゴミ掃除
「食欲の秋だー!」
授業終了のチャイムが鳴ると同時に、
誰もいない廊下を秋風のように走り抜ける。
「おーい! 廊下は走るなよー!」
「はーい」
先生が注意をするんで、一旦走るのをやめて階段がある角まで歩く。
先生が見えなくなったら、急いで階段を駆け下りる。
「今日は、もちろん肉うどん、だよね!」
「いいね!」
私たちは、チャイムダッシュをして学食へと向かっていr。
急いで向かうのには理由がある。
我が高校の人気メニューの肉うどん。
肉がなくなり次第、売り切れになってしまうのだ。
今日は絶対食べたいと、美紀と話し合っていた。
ふふふ。これが楽しみで授業頑張ったんだよ!
階段を降りると再度走って学食へと行く。
急いで来たが、既に数人生徒がいた。
「これくらいの人数なら、まだ間に合いそうだね」
「うん。セーフ」
早速、学食に入ろうとすると、学食の外のゴミ箱が気になった。
ゴミが溢れていた。
「ご飯を食べる前だっていうのに、なんだか気分が良くないな」
「なんか嫌だけど、早く並んじゃおう? 早く並ばないと、肉うどん食べれなくなっちゃうよ」
私が学食に入ろうとすると、美紀は立ち止まったままだった。
「私、何かヤダ」
美紀は頑固なんだよな……。
こういうことを言いだすと、私の言うこと聞いてくれないんだよね。
どうにかするしかないか……。
ゴミ箱の方を見る。
ペットボトルを捨てる場所なのに缶が入れられているし、燃えるゴミの場所にはペットボトルが入っていたりした。
「
「まぁ、ごはん前に汚いの見るのは、誰でも嫌だよね」
「ちょっとだけ違うかな。この子達はゴミじゃないんだよ」
なんだか、美紀のスイッチが入っちゃったみたい……。
「分別って言うのは購買者の義務だって思うんだよ! 物を買った人に課せられる義務!」
美紀って、実は熱いんだよね。
「ペットボトルだってリサイクルされて、色んなものに生まれ変わるんだよ。ゴミじゃない! 缶だって、ピンだってそうだよ!」
美紀の言ってることは正しいと思う。
しょうがないから、私も手伝おう。
早く終わらせて、どうにか肉うどんを食べたいしね。
「私、これでも風紀委員長だからね! すぐやっちゃおう!」
「うん」
風紀委員長が廊下を走っちゃうのか、とは思うけれども。
そこは黙っておこうっと。
美紀は、燃えるゴミに入ってしまっていたペットボトルを素手で取る。
ラベルを取って、燃えるゴミへと入れる。
キャップは、ペットボトルのゴミ箱の上の、キャップ専用のリサイクルボックスへと入れる。
「ちゃんとラベルも外して、蓋もリサイクルボックスがあるところもあるんだよ。これ捨てたやつに言ってやりたいな」
きっちりしてるんだよね。
真面目にしているところは、カッコいいなって思う。
それにしても、結構量があるな。
学食も混んできそうだし。
……はぁ。
今日は肉うどん諦めるか……。
そう思っていると、学食の裏からおばちゃんが慌てて出てきた。
「ゴミ袋交換忘れてたと思ったら、あなたたち綺麗にしてくれてたのかい?」
「はい! 学食近くのゴミが汚くなるのは、見過ごせません! ご飯が美味しく無くなっちゃいます!」
おばちゃんは笑って、喜んでくれていた。
「ありがとう。うちの学校に、こんな生徒がいるなんて、頼もしい限りだわ」
「いえいえ、当然のことをしてるまでです!」
おばちゃんは、うんうんと頷いた。
「あなたたちのために、人気メニューの『肉うどん』用意しておいてあげるわ」
おばちゃんからの優しい提案。
やった、楽しみにしてたメニュー食べれるじゃん。
「いえ、それにはおよびません!」
いやいや、美紀何で断っちゃうの……。
私が口を出せないでいると、おばちゃんがニッコリ笑った。
「今どきの子は、遠慮することが美徳と思っているのかい? 子供が遠慮しちゃいけないよ。デザートにプリンもつけておくからね!」
おばちゃんはウインクをして学食へと戻って行った。
「美紀、ゴミ掃除するっていうのも、良いね!」
「本当は、奉仕活動でするべきですけれども。綺麗にするって、心も澄んで気持ちが良いよね。私、ゴミ掃除って好きなんだ」
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