オンラインゲーム

 暗い部屋で、PC画面だけが明るく光る。

 静音性能は高いとは言え、PCファンが回る音が部屋の中に響く。


 私のゲーム専用機は、ノートパソコンなんかじゃなくて。

 ちゃんと、ガチのやつ。

 私の左手にいる、ごつい筐体が私の相棒。


 こいつがいるからこそ、実現できるプレイっていうものもあるんだよね。

 オシャレさを求めない、無骨さ。

 よく巷の人たちはゲーミングPCを光らせたりするけれど、そこに少しでも電力を割くのであれば、冷却する方向に回すべき。


 LEDは熱を発さないとはいえ、パソコンの性能を悪化させる原因になるんだから。

 そして、私の相棒は机の上に置いてある。

 出来るだけCPUファンの風を筐体内に取り入れるためには、やはり机の上に置くべき。

 机の下なんてダメ。

 相棒を足蹴になんてできないしね。


 大好き、私のガリレアちゃん。

 今日も、私を狩りに連れて行って。


 有線で繋がれたコントローラーを握りしめる。

 e-スポーツは、1秒未満の反射神経が要求される。

 ガリレアちゃんと一緒で、たとえ見た目がカッコ悪かろうと性能重視。

 無線よりも、有線接続の方が反応が早いんだ。


 早速、ゲームにログインすると、いつものメンバーが待っていた。

 現実にももちろん友達はいるけれども、オンラインは別。

 オンラインにいるのは、友達じゃなくて、仲間だ。

 画面の中に、スタイリッシュなキャラクターが映る。


「お待たせ」

「時間ぴったりだね」


 ファースト・パーソン・シューティングゲーム、通称FPS。

 チームに分かれて、敵を打ち抜くんだ。


 いつもの私の仲間。

 一番仲がいいのは、このスタイリッシュな服装のAKINAあきなちゃん。

 この子がすごく強い。


「早速行こう」

「うん」


 ◆


 街中のようなフィールドで戦う。

 瓦礫があったりして、隠れやすい地形になってる。


 チーム戦が始まると、私が先に進む。

 前衛を務めるのが私の役目。


 小回りの利く小さな銃を持って、隠れながら進んでいく。

 身長に物音を立てないように。

 音で相手に気づかれてしまうから。


 それは相手も同じ。


 ――ガタッ。


 右手の方で物音がした。


「その建物の影にいる!」


 チーム内の音声チャットでやり取りをする。


 私は、相手が顔を出す前に、照準を合わせる。

 音を頼りにして、相手が出てくるのを待つ。


 ――来る。


 相手が見えてから打つのでは遅いのだ。

 経験と勘を信じて、見える直前に打つ。


 この距離だと、玉が相手に届くまでの時間は、10フレームくらい。

 ちなみに、私のパソコンは240fps。

 一秒間に240回映像が更新されるっていうこと。

 それの10フレーム分。

 相手が出てくるよりも少し前っていうこと。


 私が銃を打った直後に相手が顔を出した。

 そこにジャストヒット。


「よし!」


「……危ない!HALはる、しゃがんで」


 AKINAちゃんが、そう言ってきた。

 私が咄嗟にしゃがむと、私の頭上を銃弾が通り過ぎて行った。


 その間にAKINAちゃんは、私を打ってきた奴の頭を打ち抜いていた。


「HALちゃん、一人倒すとすぐ安心するのが悪い癖だよ?」

「ゴメン、ありがとう」


 遠くからでも瞬時に、正確に射抜くAKINAちゃんがいるからこそ、私は思う存分前に出れるんだ。


「後ろは任せたよ」

「もちろん」


 オンラインには、仲間がいる。

 これだから、オンラインゲームって好き!

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