カピバラ
「動物を見て可愛いって思うのって、人間に似たところを見出しているかららしいよ」
博識な大山君が言うのであれば、確かにそうかもしれないなーって思うな。
パンダとか見ていると、あの動きってなんだか赤ちゃんみたいな動きだし。
言われてみれば。
ペンギンの行進だって、よちよち歩いている幼稚園児みたいで可愛い。
確かにそうかもな。
けど、けど。
大きいあくびをしているライオンとかも、そうなのかな?
あのあくびは、なんだかお父さんを連想させるんだよね。
髭もじゃもじゃ生やして、髪の毛だらしなくて。
ライオンは可愛いけど、お父さんは可愛くないし。
うーん……。
ライオンは何に似てるんだろ……?
自分の中で、大山君の言葉を反芻していると、大山君がこちらを向いて笑ってきた。
「そう言う説もあるらしいってだけだよ。あまり真剣に考えないでね」
そう言って、順路を先に歩く大山君。
なるほどー……。
私は少しからかわれたのかな。
さすがに猿とか、ゴリラとかを見ても、なかなかニッコリとはいかないですよね。
大山君の『諸説あります』っていう雑学。
あれ、どこから仕入れてるんだろうな。
私もカッコ良く言い返せたら良いのに、いつも煙に巻かれるみたい。
ちょっと悔しいな……。
そうだ!
私も一つとっておきの雑学があるから披露しよう。
昨日テレビで見たんだよね。
「大山君、知ってる? 動物を見て可愛いと思うのって、自分よりも弱いものを守ってあげたいって言う気持ちから来るらしいよ!」
大山君は、一瞬「そうかな?」と言う顔をしていたが、段々と納得した顔になっていった。
「それは、確かにそうかもね、
ふふふ。
大山君に認められた。
そうだよね、やっぱり人間に似てるって言うよりも、弱くて、守ってあげたいなーって思うと、可愛いなって思うよね。
そう言っていると、動物と触れ合う広場に突き当たった。
「せっかくだから、餌でもあげてみる?」
「そうだね、可愛いもんね!」
広場に入ると、そこは小さい動物が放し飼い状態。
ちょこちょこと動いている。
小さいウサギさんとかが餌を食べてるところ。
お口は、身体よりも、もっと小さくて。
ちょこちょこちょこって食べてくんだよね。
可愛い。
少し大きめのカピバラさん。
無心で草を食べてるカピバラも癒しだなぁ。
誰に似てるわけじゃないけど、可愛い。
「カピバラってさ、なんだか小川さんに似てるよね」
「え、似てないよ。私って、こんなにのんびりマイペースにしているように見える?」
「うん。とっても可愛いって思うよ」
……ぬぅ。
大山君は、真顔でこういうこと言ってくるんだよな。たまに。
恥ずかしさという感情を、どこかに置き忘れてきたのか。……まったく。
「僕は、動物の中でカピバラが一番好きだな。可愛くて、小川さんに似てるから」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます