蕎麦
私と
ちゃんと告白って言うものをされてない気がするんだよね。
「今度の休み、ここ行かない?」
そう言って誘われて、今日もデートに来たんだ。
私はデートだと思うんだけど、杉内君は
デートに誘う時も「ここ行きたくない?」って聞いてきたり。
勝手に「どこ行こう」って決めたりして。
男女が二人出かけるって、普通はデートだよね?
いつも気になっているけど、問い詰められないんだよな……。
杉内君って、時々そっけない態度したりもするし。
友達にも、私の事を全然言ってないみたいだし。
私は遊ばれているだけなんだろうか……。
私の、一度きりの女子高生なのに。
逆に、私も遊んでやればいいのかな。
冷たくしていると、私はどっか行っちゃうんだからね。
そうやって強く言えればいいけど……。
けど、「付き合ってないし」とか言われるのが怖いんだよね。
だから今日も、私は黙って、着いてきてます。
今日は、深大寺というお寺に来ています。
杉内君が蕎麦食べたって言うから。
渋すぎるでしょ。
高校生がお寺に蕎麦を食べにくるって。
これって、やっぱりデートじゃないのかな……。
カップルがお寺に来るならさ。
普通は『恋愛成就』とか、『縁結び』とかをするって思うじゃん。
もしくはさ、そうで無くても映えスポットとかさ、記念に写真撮ったり。
そういうのがあるって思うじゃん。
ここに来る途中に、縁結びのお守りが売ってるの見えたよ、私は。
杉内君は、ささーって通り過ぎちゃって。
本当に蕎麦を食べに来ただけっぽいし……。
はぁ……。
別れるというか、もう一緒に行動するの辞めちゃおうかな……。
杉内君、カッコいいとは思うんだけど、遊ばれてるだけだな、多分。
杉内君、自分が来たいって言ったのにさ。
蕎麦をすする杉内君は、気もそぞろというか、蕎麦をあまり味わってない気もするし。
あーー。もう、よくわかんないよー……。
そう思っていると、杉内君が口を開いた。
「ここで一緒に蕎麦を食べると、ずっと傍に居られるっていう言い伝えがあるらしいよ」
「……えっ? ここの蕎麦屋さんそんなところだったの?」
そんなオシャレなスポットだなんて、知らなかった。
ちょっと古めな蕎麦屋さんなのに。そうだったんだ……。
……まさか、そういうのも事前に調べた上で蕎麦を食べに来ようって誘ったのかな……?
杉内君は、私に目を合わせず蕎麦の方を見ながら言ってくる。
「そう言えばさ。ちゃんと言ってなかったと思って」
「……なに?」
杉内君は顔を上げて、私の目を見て言ってきた。
「梓、ずっと俺の傍にいて欲しい。付き合って下さい」
……杉内君。
……私の事、ちゃんと考えてくれてたんだ。
それで、この場所を選んでくれていたんだ……。
今まで、そんな素振りを見せなかったくせに……。
私は、ずっとその言葉を待っていたわけだし。
やっと言ってくれたことが嬉しいし、私の答えはもちろん決まってるけどね。
けど、今まで焦らされた分、焦らし返してやろう。
そうしないと、気が済まないや。
これからも一緒にいるんだろうし。
これでチャラにしてあげよう。
「蕎麦って、やっぱり美味しいね。ここまで来るまで、ずっと私もついてきたわけだし。ちゃんと私も、好きだよ。蕎麦!」
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