アウトドアスポーツ

「ふぅ。今日はこのくらいにしておこうか」


 今日も疲れたよ。

 夏程の暑さは無くなったけれど、屋内競技って蒸し暑い。

 風も吹かない体育館。


 体育館のコートとは別に、少し階段を上がった部分に卓球場があるのがうちの体育館。

 他の部活とは、練習場の取り合いにならないからいつでも練習ができる。


 それが良いところだけれども、致命的なのは風通しが劇的に悪いところ。


 今日も暑かった。

 卓球ラケットをうちわ代わりにして、卓球場から階段を降りると柚希ゆづきがいた。


「やぁやぁ、たまきちゃん。インドアスポーツばかりしていないでさ、外でスポーツしようぜ」


 妙に馴れ馴れしいのは、幼馴染ってやつ。

 幼稚園から中学校まで、ずっと一緒だった。高校まで一緒位なるとは思っていなかった。

 女の子にしては、アクティブな性格な柚希。


 この前、体育の時間に見せてもらったけど、ちょっと腹筋も割れてる。


「柚希、こっちは遊びでやってるんじゃないんだよ。インドアスポーツでもちゃんと爽やかな汗もかくんだよ。外でスポーツしなくても、インドアだって良いじゃない。卓球の何が悪いって言うのよ」


 なんて言われ方すると、マイナスなイメージなんだよね。

 風の影響を受けたりするような、バドミントンだってインドアスポーツ。

 宙から吊り下げられたリングを使うバスケットだって、床に飛び込んだりするバレーボールだって。


 それぞれ、インドアでやるなりの理由って言うものがあって。

 それぞれ、尊重すべきだって思うんだよ。


 なのに、インドアって言われると、なんだか暗いやつって言われているような気分。

 アウトドア派な柚希が言うからかも知れないけど。


 アウトドアが好きだったら、学校の授業もぜーんぶ外で受けろって思うよ。まったく……。


「で、柚希は何が言いたかったわけ。外に出て、何をするのよ」

「やる気になった? じゃあ、環はそれ持ってね。行くよ!」


 柚月が指さす先にあったのは、大きなカバン。

 それは、まるで登山にでも行くような。


 まさか……。


「登るよ!」


 この学校の裏には結構大きめの山がある。

 遠方からハイキングを楽しみに訪れる人もいるくらい。

 柚希は、そこに行く気だ。


「一緒に、ろう!」


 ワンゲる。

 柚希が作った言葉なのか、みんなもそう言っているのか。

 が山を登る時に、そうやって使っているのを聞いたことがある。


 ワンゲるって、言わないから普通。


「行くって、今から行くの? 私今部活終わったところなんだけど……」

「ちょうどいいね!」


「もうすぐ日も暮れちゃうよ」

「まだ暮れていないってことだよね! 今がチャンス!」


 明らかに私のことを待っていた感じだ。


 このアウトドア派のポジティブ女子を幼馴染に持ってしまったのが運の尽き。

 幼いころから、運の尽きなのか私……。


 まぁ。

 インドア派な私を、外に連れ出してくれるところ。

 嫌いじゃないけどね。


「外で身体を動かせば、気持ちいいよ! 高いところの方が空気も良いし! アウトドアスポーツって、気持ちいいよね! 小さい頃から好きだったじゃん! さぁ、一緒にワンゲろー!」

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