好きな人と叶える夢

 自分は夢の中にいるって分かる夢。

 たまに見るんだよね。


 今が、まさにそう。


 鈴木君がいて。

 サッカーしてる。

 カッコいいんだよね。


 すごいドリブルだよ。

 空を飛んでるみたいにすいすい進んでいく。

 私は、それを追いかけてる。


 同じチームでサッカーしているのかな?

 夢の中なら、好き勝手出来るし。

 夢の中なら言えるんだけどな。


「好き好き好き! ‌大好き! ‌こっちだよ、鈴木君!」


 驚いてこっちを見てる。

 ふふふ。


「サッカーなんかしてないで、私と付き合いなさいよ!」


 そんな強気のことも言えたりしてね。

 夢の中だもんね。


 飛んでるはずなのに、なんだか地面が揺れるな。

 地震かな?


 ゆさゆさ、ゆさゆさ。



 揺れが激しくて、目が覚めた。

 いや、目覚めてないのかな?


 私はまだ飛んでるみたい。

 自分で歩いていないのに、廊下を進んでる。


 すごい、すごい。

 まだ夢の続きだ。


 多分まだ夢だよね?


「目、覚めたか? ‌自分で歩ける?」


 後ろの方から、鈴木君の声がする。

 ドリブルしてる鈴木君を追いかけてたと思ったけど、私追い抜かしちゃったのかな?


 声の方を向くと、彼の顔がすぐそばにあった。

 すごく近い。


「わっ! ‌なんでそんな近いの!」

「おいおい暴れるなよ。落ち着けよ、落ちるだろ」


 鈴木君は、ギュッと私を抱きしめてくれる。

 いわゆる、お姫様抱っこというやつをされてるらしい。

 私の体は横むきになっていて、鈴木君の手が私の背中のあたりと、私の膝のあたりにある。


「なんで?」

「なんでじゃないだろ。お前が体育の授業中に倒れちゃうから」



 ……あれ? ‌そんなことあったっけ。?

 そう言われれば、体力が入らない……。


「保健委員と体育委員って、勝手にセットにされてるから、俺が保健体育委員」


 夢を見てたと思ったら、夢みたいな状況。

 ……思い出してきた。


 私、体育の授業中に倒れちゃったんだ。

 秋だっていうのに、外はすごく暑くて。

 なんだか、体がふらふらするなーって思ったら、倒れてたんだ。


 けど、この状況。

 ……ラッキーだな。


「なにニヤニヤしてるんだよ。歩けるのか?」「まだ歩けない」


「そうなのかよ。しょうがないな」


 鈴木君にお姫様抱っこしてもらってる。

 夢だったけど、叶っちゃったな……。


「さっきからニヤニヤして、面白い夢でも見てたの?」

「面白い夢だったよ。それが叶ったみたいな気持ち」


「一人で楽しそうだな。こっちの気持ちにもなってくれよ。お前意外と重い……」

「重いなんて失礼だよ!」


 怒って鈴木君に振り返ると、申し訳なさそうにしていた。


「……そうだな。ごめん。それより、どんな夢見てたんだよ」

「秘密だよ。全部実現したら教えてあげるね」


 いつか叶うといいな。

 好きって言って、付き合ってくれる夢。


「その夢、早く叶うといいな」

「鈴木君も、協力してよね!」


 好きな人と叶える夢。

 私の好きな夢、早く現実になればいいな。

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