文化祭実行委員

 文化祭実行委員は、クラスごとの文化祭の出し物を決めたり、全体の出し物を決める委員なんだ。

 秋だけ活動する委員会。


 一年通じてあまり活動しないから、楽な委員会っていう噂が広まったこともあったらしいんだ。

 そのせいで、怠け者のメンバーばかりが集まっちゃって、文化祭がつまらなくなりがちな時期があったらしい。


 そこで、先生方、先輩達が考えた制度。

 文化祭実行委員だけは、『投票制』で選ばれることになっているんだ。


 各クラスごとに、文化祭を盛り上げてくれそうな人をクラスメイトの中から投票して選ぶ。

 そうすることで、盛り上げ上手な人が選ばれるし、何より『選ばれた』って言うことで責任感を持つのと、何と言ってもやる気が出るというセットらしいです。


 そんな文化祭実行委員、なんでか、私が選ばれてしまったんです、


 文化祭を、盛り上げなければいけなくなっております。

 今日はその委員会の集会の日。


 全学年、全クラスの委員が集まっている。

 集まっていある子は、なんだかみんなクラスの人気ものみたいに見えてくる……。

 私はそんなことないのに……。


 前にいた委員長と思われる人が、名簿と人数を数え終わると、挨拶を始めた。


「皆さんこんにちは。文化祭実行委員長の森です。今年も文化祭の時期が近付いてきたので、集まってもらいました。今年は珍しいことに、女子だけみたいです。まずは肩に力を入れずに、気軽に発言してもらって大丈夫です」


 眼鏡をかけた委員長、なんだか真面目そうだな。

 委員長は話を続けた。


「あなたたちの面白いと思うことが、きっと面白いはず。それで、盛り上がると信じています」


 なんだか熱い演説が始まった。

 毎年こんな感じなのかな。すごいな……。


「伝統を絶やさず、熱い気持ちでお祭りを盛り上げて欲しい! ここに、実行委員を開始します!」


 ぱちぱちと拍手が起こった。


 初めてだけど、私が実行委員できるのかな。

 すごいプレッシャーがある……。



「人任せはダメですからね。自ら率先して盛り上げていく、それが実行委員!」


 応援団みたい。



「皆さんは何がしたいと思いますか? じゃあ、あなた!」

「え、私……やりたいこと、考えれてなくて……」


「じゃあ、今考えていいよ。ちょうどいいね、今したいことをやるべき。明日したいと思ったことは、明日すればいい」



 ……熱い人だな……。

 ……私が今したいことか。考えたこと無かったかも。


「何でもいいよ。まずは発言するところから」


 委員長に目を付けられちゃったのか、ずっと私ばかり。

 ……何か言わないと。


 ……私が、今したいこと。


「……私も、委員長みたいに、文化祭を盛り上げたいです」



 私がそう言うと、委員長は笑い出した。


「ふふふ。一年三組。えーっと、萩原さん? まずはそれでいいよ。自分がやりたいことに、ちゃんと目を向けてあげてね。無視したり、知らんぷりすると、心の声はどんどん小さくなっちゃうからね! やりたいこと、私と見つけよう!」


 委員長は、私をじっと見つめてそう言ってくる。

 なんでか、私が文化祭実行委員になっちゃったけれど。

 なれて良かったかも知れない。


 私、ここでなら、何か変われるかも……。



「私、頑張ります! 委員長!」


 私の宣言に、拍手が起こった。



「じゃあ次、一年二組!」


 委員長は、一年生を中心に、まずはやる気を出させていっているみたいだった。


 委員長、カッコいいな……。

 私もやりたいことを見つけよう。


「文化祭、始まる前の準備も含めて、大事な思い出だ! 悔いを残さないように全力で楽しもう!」


 熱い委員長。

 私、文化祭実行委員になれて良かったと思います。

 この委員会、好きです。

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