10月

秋のファッション

 最近、急に寒くなってきた。


 十月になると急に寒くなるのか、丁度衣替えの時期になったので半袖達を閉まって、長袖を出す。

 長袖は、クローゼットの奥に閉まわれているので、そこからせっせと取り出す。



 一年ぶりに見る服たちは、何だか少し小さいような気もする……。


「これ、去年のやつ、今年も着れるのかな?」


 私も成長期ですからね。

 どこがとは言わず、全体的にです。


 身長は、ちゃんと順調に伸びているんですよ。

 他の人からしてみれば、少ないかもしれませんが……。


 あと、色んな所も、大人仕様になって来てるはずですし。


 そう思って去年の服を着てみると、ぴったりだった。


 ……去年の服さん。

 ……ちょっとくらい縮んでくれても良いんですよ。


 私の姿を見て、お母さんも言う。


「ぴったりじゃん。良かったね、今年も着れそうだね」


「……良かったと言えば、良かったですけど。お母さん、私の乙女心も少し考えてください。いろんなところ成長してるんですよ。服に隠れて見えないだけで。……あれ、ここ……。この服、お気に入りだったのに、穴開いてる……」


「あら、残念……。お母さん、ちゃんと防虫剤入れておいたのよ? 気を取り直して、また買ったら良いよ」



 ……うーん。しょうがないか。

 モノはいずれ、形を無くす運命。

 これ、彼が褒めてくれてたのにな……。


「毎年、同じ服を着てちゃ、写真映えもしないんだからさ! 新しいのに挑戦してきなさい」

「はーい」



 ◇



「……という事があったんですよ」


 私は彼と、ショッピングモールへと来ていた。


 服を買うときは、いつも彼と一緒。

 長年べったりなんです。


 周りからは、『おしどり夫婦』なんて呼ばれたりして。


 そう見えちゃうってことなんですよね。

 ラブラブって言うことで。

 ありがとうございます。



「そうだね、服は買い換えても良いかもね」


 私の独白に混じって彼が答えてくれた。


「じゃあ、新しくしようかな」

「それじゃあさ、これはどうかな?」


 彼は協力的に勧めてくれるんです。


 けれども。


 こういうのが好きになってしまったのかな?


 なんだか、少しギャルっぽいと言いますか……。

 なんで、お腹だけ出てるんですかね、この服……。


「違ったかな? 似合うと思ったんだけどな? じゃあこっちは?」


 うーん。今度は、何故か肩の部分だけ出ている。

 服とは体を覆うものでありまして、何故布を少なくする方向へと行くのでしょう。

 現代のオシャレとは……。



「えっとー……。もっと大人しめな服が良いかなー?」


 私は、それとなく彼に伝える。


「うーん、それも良いけど、せっかくなら新しい君も見てみたいなって」


 そう言って、爽やかに笑いかけてくる。


 『おしどり夫婦』でも、ドキッとはするものでして。

 ……こういう服が好きだったりするのかな?


「ずっと、大人しめな服も良いけど、それはもっと大人になってから。あと十年後くらいに見せて欲しいかな」


 ……それとなく言っているけれど、それって十年後も私と一緒にいたいと言っているわけでありまして……。


「年をとっても着れるものは、後の楽しみに取っておいて。お義母さんの言う通り、写真に残る事とかを考えると、こういう方が良いかもしれないよ」


 ……まったく。

 ……人の母を、お義母さんと呼んだりして。


「何を着ても似合うと思うし、僕は好きだよ」


 ……。


「……じゃあ、着てみるね」


 そう言って、彼が選んでくれた服を受け取った。



 いつも、そうやって私を違う世界に連れ出していってさ……。

 そういうところだよ……。


「私も、ファッション好きだよ。……これ着るけど、絶対に似合うって言ってよね。……この先も、ずーっと言い続けてね」

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