秋の空
学校の行事で、秋には陸上競技大会がある。
特に珍しくも無いが私の中学校では男女混合リレーが行われる。
この時期になると、体育は男女混じって行われる。
校庭に丸くトラックの線を引いて、そこで練習が行われる。
クラス対抗リレーには、足の速い人を選出している。
私の幼馴染の
小さい頃から走るのだけは得意で、今年のリレーでは私のクラスのアンカーをしている。
「トラックを走る宙君カッコいい」
「いつ見ても、カッコいいよね」
練習ではいつも一着は宙だった。
ゴールをすると、周りに女の子達が駆け寄っていく。
「足が速い」だの「カッコいい」だの。
女子たちにちやほやされて、宙はデレデレしちゃって。
私も駆け寄る中の一人だ。
「はい、これで汗でも拭きなさいよ」
宙にタオルを渡す。
「サンキュー」
宙は、寄ってきてた女子たちをかき分けて、私からタオルを受け取る。
それに対して女子たちは良い顔はしない。
「何よ、一人だけ抜け駆けして」
「
そんな小言が聞こえてくる。
みんな同じ小学校にいて宙のことを昔から知っているはずなのに。
中学校に入学しても宙は全然見向きもしなかったのに。
中学二年生になってから宙の身長が一気に伸びて、中学三年生にもなると180cmくらいになっていた。
元々運動神経は良かったが、身長も伸びたおかげで周りにすごく差がついていた。
スタイルも良くて、顔も小さい。
一気に人気が出てきたのだ。
昔から何も変わって無いのに。
カッコいいままなんだよ、宙は。
◆
昼休みになると、私は一人で体育館の裏でご飯を食べる。
クラスの女子から嫌われてしまっているらしくて、教室には居づらい。
一人で食べるにはここが良い。
この季節、体育館裏は涼しい。
日も高くまで昇らずに、ちょうど体育館によって日陰になるのだ。
そこで、座り込んで弁当を開くと、歩いてくる人影があった。
宙だ。
「一緒に飯食おうぜ」
「やだよ。誰のせいでこんなところで食べる羽目になってるのよ。まったく」
宙は私の隣に座った。
身長が大きくて、私よりも頭二つ分くらい高い場所に空の顔がある。
「俺のせいって言われてもな。特にいつもと変わらないし」
宙の顔を見上げると、いつもの穏やかな顔をしていた。
相変わらず、カッコいいんだから。
そういうところ、腹が立つな……。
「秋の空って変わりやすいんだから。いつまでも一緒にご飯食べれるなんて思わないでね」
こう接することしか私にはできない。昔からずっと同じ。
変わる事なんてないのに。
宙は、困った顔をしながら私の方を向いて言う。
「俺は、変わらないから。いままでも、これからも、ずっと」
そこまで言うと、恥ずかしくなったのか顔を赤らめて、ご飯を食べ進めた。
分かっているよ。
宙の気持ちが変わらないのも、私の気持ちが変わらないのも。
高い空には、薄いうろこ雲が広がっている。
もやもやした気分は、なかなか晴れないな……。
「私も、秋の空好きだよ。けど、このもやもやした気分を吹き飛ばして欲しいよ。秋が好きって言って」
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