キュート

 秋のシルバーウィーク。

 三連休っていうだけで、気分が良い。


 学校も休み、部活も休み、宿題も終わった。

 涼しくて過ごしやすいし。

 シルバーウィークって、ゴールデンウィークと僅差で負けてしまったのかなって思うくらい良いウィーク。


 今日は、鈴花すずかとショッピング

 いや、別に私たちにそんな関係はなくて。

 二人で過ごすから、『デート』。


 手は繋いで歩くよ?

 仲の良い友達だったら普通そうだし。


 気分も良いし、せっかくのシルバーウィークだからって、シルバーのイヤリングを買ったところだった。


 気に入ったものが少し高くて、一セットだけ買ったんだ。

 どうせお揃いにするつもりだったから、片方ずつつけようって鈴花に言ったの。

 お店の人にも『仲が良いんですね』って言われて、あははーって二人で笑い合ってた。

 私は右側につけたら、鈴花は「私は反対につけよう」って言って。


 ハートの片割れみたいなデザインだし、二人で別々の方の耳につけた方がオシャレかなって思った。

 私たちはそれだけ仲が良いっていうお友達!


 イヤリングをつける私たちを見て、お店の人が「お二人はお似合いのカップルですね」って言っていたけれど、別にそんな関係じゃないのにね、って鈴花に言ったの。

 そしたら、笑ってくれてた。


 そう。

 だから私と鈴花は、普通に仲の良いお友達です。


 鈴花の左耳に揺れる、シルバーのイヤリング。


「お揃いで嬉しいね」

「これからも、ずっとつけてたいね」


 うんうんと私は頷いた。


 シルバーウィークって楽しいなー。

 そう思って街を歩いていると、黒いゴシック調のロリータファッションに身を包んだ女性が歩いているのが見えた。


 ここはある程度、都会だけれども中々見ない格好であった。


「ああいうのって、可愛いな。私も着たら似合うかな?」

玲奈れなは、似合いそうだね」


 まだ着てないけれど、何だか褒められた気分で嬉しい。

 今度、本当に着てみようかな。


 どんな感じで着こなせば良いんだろう。

 ちょっと参考に見ておこう。


 そう思ってまじまじと見てみると、どこかで見覚えのある顔だと感じた。


「あれって、もしかして現国の椿田つばきた先生じゃない?」

「え、そんなわけないよ。椿田先生って、大人しそうで真面目そうで……。本当だ、椿田先生だ……」



 やっぱり、可愛い格好をした椿田先生だ。可愛い。

 人目を気にせず、自分らしさを表すファッションっていいなって思う。


 待ち合わせをしているのか、私たちが歩いてきた駅ビルの手前で止まって携帯を見始めた。


「鈴花、せっかくだからさ、先生に挨拶しようよ。私ああいうの好きなの。ファッションで自分を表してるっていう感じ」

「……そうかもね」


 鈴花は、左耳のイヤリングが気に入ったのか少し触れていた。

 確かに、私たちのシルバーウィークの楽しさをあらわしているもんね。


「そのイヤリングも、そうだもんね!」


 鈴花は、なんだか言葉に詰まっていた。

 まぁいいか。先生の所にちょっと挨拶してこよう。



 近づいてみると、オーラがあるようだった。

 すごく可愛らしい。


「椿田先生ですよね、その恰好とってもキュートです! ‌そういうの好きです。今度ブランドとか教えて下さい」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る