チリコンカーン

 四時限目の終わりを告げるチャイムが鳴ると同時に、一部の生徒がすぐに動き出した。


 その子たちは、教室の後ろに走っていくとすぐ配膳台を出し始めた。

 今週の給食当番はやけに手際が良いな……。


 今日はやけに気合が入っている。なんでだろう。


 大輔君に、京子ちゃん。

 うーん。給食大好きメンバーが当番だからかな。

 なんにしても、きびきび動いている人達見ると、何だか気持ちがいいな。



 私は今週は給食当番じゃないから、のんびりトイレにでも行っておこうかな。

 教室の前の方のドアから出る。


 トイレまでの道をまったりと歩いていると、白衣を着た給食当番が私を追い越していった。


 あれ? うちのクラスの給食当番だよね? 早すぎない?

 白衣準備するのとか、いつもはもう少し時間かかるじゃん?


 本当に何だろう。

 今日は何か良い給食だったっけな?

 給食メニューなんだったっけ?


 考えながらトイレへと入る。

 なんだっけ。

 うーん。

 思い出そうとしても思い出せなくて、トイレの間ずっと考えてた。

 けど、思い出せなくて。


 カレーライスは月末だし、今日は別に特別なデザートなんて無かったと思うし。

 うーん。


 悩みながらトイレから出てくると、ちょうど給食当番が教室に入るところだった。


 あれ? やっぱり早い。

 やる気が、すごいなぁ……。


 教室に入ると、先生の声が聞こえた。


「すぐに旧称の準備しちゃいましょー。皆並んでくださいー」


 先生がみんなを促すと、すぐに配膳台に列ができた。

 みんなから出遅れてしまった私も、みんなの後ろへと並ぶ。

 私が一番最後になってしまった。



 こんなにみんなが早いのは、給食の時間が楽しみなんだね。

 給食当番以外の人も、先生さえも急いで。


 給食当番の人が、一つ一つのおかずを器に入れて渡してくれる。


 まず最初に渡されるたのは、白米。

 うん。特に揚げパンとかって言うわけでもないんだ。


 続いて、牛乳。

 これもいつも通りだよね。


 次は、海藻サラダ。

 美味しいけれども。これが楽しみだったのかな?



 最後は……。

 チリコンカーン。


 なるほど、これか。

 ちょうど、大輔君がチリコンカーンを取り分ける係だった。


 一生懸命に、どの子にも同じ分量がになるように微調整をして言っている。

 中に入っている豆と、牛肉を同じ数に合わせてる。


 大輔君が、綺麗に盛ってくれたチリコンカーンを私は受け取った。

 私の後ろに誰もいないし、せっかくだから大輔君に聞いてみよう。


「今日の給食の準備、とっても早かったね。そう言うの良いと思うよ」

「おう。早く食べたいからな!」


「取り分けるのも、とっても上手」

「まぁな」


 少しだけ嬉しそうにする大輔君。

 早く食べたいのか、若干そわそわしている。

 やっぱりこれなんだ、多分。


「こんなに一生懸命準備して、大輔君は今日の給食で好きなメニューがあるの?」


 私がこんなことを話している間に、大輔君はすっかり白衣を脱いでた。


「もちろん、俺はチリコンカーンが大好きだよ!」

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