コスモスの日
今日は、
駅の改札を出ても美玖はいなかったから、私の方が先に着いたみたいだった。
朝の光を浴びながら眺める駅は、なんだか綺麗に見えた。
今日は、この街で思いっきり遊ぶんだ。
この駅の近くには、ちょっとした遊園地がある。
そこには観覧車があったり、ジェットコースターがあったりする。
他にも大きなショッピング施設もあるから、お店を見て回るのも良い。
もしくは、少し歩けば海が見える公園がある。
そこで海風にあたりながらお散歩だってできる。
今日は、どんなデートになるかな。
久しぶりだからなー。楽しみだな。
そう思っていると、美玖が改札から出てきた。
「お待たせ」
今日の美玖は、なんだか大人っぽい。
秋色を意識したのか、全体を茶色っぽい色で整えている。
ロングスカートに、可愛いポシェット。
頭には、ふかふかとした茶色のベレー帽も被っている。
大人可愛い……。
「美玖、今日は一段と可愛いね」
私がそう言うと、美玖は大人っぽい笑顔を見せた。
「そういう、
私も、秋っぽい季節を意識して茶色を基調としたコーデ。
白いメッシュのニットと、その下に半袖を着てる。
それと、短めのスカート。
美玖とは違って、少しボーイッシュかもな。
それでも二人の服装は色合いが似ており、はたから見ればリンクコーデに見えるかもしれない。
そう思うと嬉しかった。
打ち合わせも何もしていないのに揃う。
私達やっぱり気が合うのかもな。
「久しぶりのデートだね」
そう言って、私は美玖の手を取った。
二人で手を繋いで歩きだす。
学校じゃ、手を繋ぐなんてことできなくて。
人目が気になっちゃうからね。
デートだと好きに手を繋げるから嬉しい。
「早速さ、観覧車でも乗ろう? 混んじゃう前にさ」
「うん」
手を繋いで歩いていると、暖かさと涼しさが感じられる。
日差しは暖かくて、けれども風は少し冷たい。
季節は、秋めいてきている。
歩いていると、美玖の方から何気なく話してくる。
「付き合って半年も経つと、分かれるカップルが多いんだって」
「そうなんだ」
何でそんな話をするんだろう。
唐突だな……。
「今日はさ、セプテンバーバレンタインっていう日らしいんだよ。女性から別れを切り出してもいい日なんだって」
「ふーん? そうなんだね」
ちょっと待ってよ。この流れって……。
美玖は何を考えて……。
「私さ、別れないからね!」
小さいけれども、力強い声でそういう美玖。
季節が涼しく変わろうとも、私たちの関係は暖かいままみたい。
私は、美玖の手をギュッと強く握った。
美玖も負けじと握り返してくる。
そんなことを気にしていたのかと、美玖のことが可愛く思えた。
なんて言葉を返そうか考えながら、しばらく道沿いを歩く。
返事を待っているのか、美玖はずっと黙ってる。
私たちが目指す観覧車への道沿いには、コスモスの花が咲いていた。
「コスモス、綺麗だね。今日って、コスモスの日でもあるんだってテレビで言ってたよ。せっかくなら、そっちの日を意識しててよ」
こちらを向いて、私の言葉を集中して聞く美玖。
駅前からずっと不安そうな顔をして。
まったく。
「コスモスの日っていうのはね、付き合っているカップルが互いに愛を伝える日」
私は美玖に笑いかけて、伝える。
人目も気にせず、大きな声で。
「好きだよ」
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