クイズ
静かな教室で、学級委員長の
それと交代して、担任の先生は坂根さんが座っていた席へ歩いてくる。
私の後ろの席。そこに先生は座った。
すぐ後ろに先生がいると、なんかプレッシャーが強いといいますか、緊張するな。
委員長が教卓の前で息を整えると、眼鏡をクイっと上げて話始めた。
「これより学級会を始めたいと思います」
書記の田中さんも一歩前に出て、委員長と一緒に礼をした。
「今日は、秋に迎える文化祭の出し物を決めたいと思います」
キビキビと話す委員長。
今日の委員長、なんだか気合が入っているな。
「何か意見のある方はいますか?」
誰からも意見が上がらない。
しばらく沈黙の時間が流れた。
なんか空気が重いな……。
そう思っていると、沈黙を破って先生が話し始めた。
「坂根、もうちょっと和やかな雰囲気にしよう」
確かに、ちょっと発言しにくい感じの真面目な空気だったもんね。
委員長ちゃん真面目だからな。
「まずは、坂根が発言してみよう。何が良いと思う? 三つくらい適当でいいから案を言ってみよう」
先生、結構な無茶ぶりをするな。
三つも案なんて……。。
少し振り返って先生を見ると、ニコニコと笑っていた。
ダイジョブかなって思っていると、委員長の目は爛々と輝いていた。
「先生、私の準備に抜かりはないです。案を十個は考えてきましたから、大丈夫です!」
「おお、やる気満々だな、じゃあ言ってみてくれ」
なんだかわからないけれど、私を挟んで言い合わないでもらいたい……。
委員長はメモを取り出して、それを確認すると先生の方を向いて話始めた。
「まず一つは、模擬店が良いと思います。なんといっても文化祭の華です。これは私が三番目にやりたい物なんです。それでですね……」
委員長は、活き活きとした話をした。
「おう、良い意見をありがとう。けどいったん止めるぞ。じゃあ、次は鈴木。この意見にプラスして何か意見を出してみよう」
先生が裏回しといいますか、指名して案を出させていく。
「えー、俺ですか? 俺も模擬店楽しそうって思います。衣装とかもこだわったら、楽しいかもなって」
「よし、良い意見だ。田中は、こういうのをどんどん黒板に書いて行って。それが書記の仕事だ」
なんだか、意見が活発に回ってきた。
こんな感じで、司会者が回していけば良いのかって、なんとなく私は思った。
委員長も頭が良いから、先生の意図は理解したと思った。
けど、委員長は自分が考えたメモを見ていた。
「鈴木君、ありがとうございます。私もその意見に付け加えますね。私のメモにもしっかりと書いております。メイド喫茶は、ゴシックな衣装であれば尚良し!」
委員長は語尾をしっかり強調して、黒板の方を振り返って今の意見を書いてと言わんばかりに書記の田中さんを見つめた。
田中さんは、おずおずと『ゴシックな衣装』と書き足した。
「えっと、委員長ばかりが意見を言うのは止めよう。次の人の意見をみんなに聞いてみて。こういう場は色んな人に聞いて、広く意見を集めるのが良いぞ」
「そうですね。わかりました。じゃあ、私の考えた案の『一位』と『二位』は後で言うようにします」
委員長は聞き分けよくメモをしまった。
「それだは、皆さん。何でも良いです。好きな物を言ってみてください。じゃあ次は
……え、私だ。
……どうしよう、何も考えていなかった。
「何でもよいですよ!」
そういう、委員長の圧が強い。
……うー。何でも良いって言われても。
……私の好きなもの。
後ろから、先生も言ってくる。
「何でも好きなもの言っていいぞ」
……うぅ。プレッシャーが強すぎるよ。
何でも良いって言われても、私の本当にやりたいもの言っても、みんなに受け入れられないと思うんだよな……。
おずおずとしている私に、委員長は優しい目を向けてきた。
「村川さん、何でもウェルカムですよ。私の考えたメモに無いことを言ってくれた方が、尚良しです」
優しい口調。
さっきまで自己主張が激しかった人とは思えない。
私も自分の意見を言っちゃっても良いかも、かな。
恥ずかしいけど……。
「……私は、クイズ大会とかやりたいかなって……」
小さい声でそう言うと、委員長は笑顔で答えてくれた。
「なるほど! 良いと思います。私のメモでも、それが一番と書いてありました。私も、クイズって好きです。それでは、田中さん! 一番大きく書いてください!」
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