知恵の輪

 小学校には、学活の時間というのがある。

 主に先生が主導で、クラスごとに自由な活動を行うのだ。

 そんな学活の時間には、月に一回レクリエーションタイムというものがある。


「今月のレクリエーションタイムは、知恵の輪をしたいと思います」


 先生はそう言って、知恵の輪を数個取り出して教卓へと並べた。


「これを、先に解いた方が勝ちというゲームをしましょう。知恵の輪って、とっても脳のトレーニングになるんですよ? 皆さん、給食のグループを作ってください」


 いつも、数人で机をくっつけて給食を食べてる。そのグループのことだ。

 先生は、その給食のグループになるように机を並べさせた。



「知恵の輪は難しいので、給食の班で分けたチーム戦にします。勝ったチームには、景品としてアイスをあげましょう」


 机を動かして、チームメンバーを眺めてみる。

 誰がこのチームにいたっけな……。


 あ、室井むろい君がいる!

 ラッキー! 運の良いことに、うちのチームにはクラスで一番頭の良い室井君がいる。

 うちのチームは強いかも! これは期待しちゃうな。


 先生は、知恵の輪をそれぞれのグループに配っていった。


「それでは、よーいスタート!」


 知恵の輪は、誰がやっても良い。

 私のチームでは、室井君が知恵の輪を始めた。


「俺に任せてくれれば、バッチリだよ!」


 さすが、室井君。期待してる!


 あーでもなこーでもないと、室井君は知恵の輪を動かしている。

 けれども一向に解けるけはがあかった。


「あれ? おかしいな? 俺なら解けるって思ったのに……。これなんか壊れてない?」


 室井君、全然出来ない。

 なんか、知恵の輪のせいにしてるし……。

 ちょっとガッカリだな。


 五分経ってもどのチームも出来ないんで、先生から提案された・


「時間が経ったら、次の人に回して下さい。みんなで解いて見ましょう」


 先生から言われると、室井君はムスッとしながら知恵の輪を放り出した。


「ちぇっ」


 次の人に渡してあげたらいいのに……。

 せめて、八つ当たりしないで欲しいな

 みんなで仲良く楽しむ時間のはずなのに……。


 机の上に放り出された知恵の輪をノブ君が手に取った。


 いつものんびりしてるノブ君。

 室井君でダメだったから、ノブ君じゃできないよね。

 せめて、アドバイスしてあげられないか、ちゃんと見てよう。


「出来た!」

「……え! 凄い!!


 ノブ君は、解けた知恵の輪をチームのみんなに見せてくれた。


「知恵の輪って、形状をしっかり見ればわかるよ。表面だけじゃくて、奥までじっくり見る野が大事だよ」


 落ち着いて話すノブ君が、何だかカッコ良く見えた。

 ノブ君って、いつもそんな風に物事を見てるのかな。


「僕、知恵の輪って好きなんだ。じっくりと観察すればちょっとした違いも分かるからさ」


 そう言って、私のことをチラッと見るノブ君。

 何でもお見通しみたいな目をしてる。

 よくよく見ると、室井君よりもカッコいい顔してる気がするし……。


 私がノブ君をカッコいいって思ったことも、バレちゃうかも……。

 私は慌てて、知恵の輪に目線を移す。


「……ちっ、知恵の輪っていいよね。私も好きだよ」

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