チャリティ

 夏休みが終わると、次のまとまった休みはシルバーウィークなのかな?

 休みが恋しいなぁ。


 休みだからって何もすることは無いけれど。

 誰か休みの日に、どこか遠くへ連れ出してくれる王子さまはいないかなー。


 夏休みが終わって最初の日曜日。

 久しぶりの学校で疲れちゃったから、私は家でゴロゴロして過ごす。


 私は家の中では王様。

 大臣は、このクッションさんだね。

 いつも私を支えてくれて、ご苦労様。



 そんな時、スマホが揺れた。

 誰からのメールだろう?

 まさか王子様かな?


 ……なんだ。

 ……明子あきこからのメッセージか。何だろうな。


「今度の休み、ライブがやるらしいよ!」


 そんなメッセージ。

 ん? ライブ? 誰のだろう?

 続けてメッセージが来た。


由香ゆかが推してた、『シャイニングプリズム』のライブだよ!」


 私の好きなアイドルだ。

 マジですか。

 来週ライブ? いきなり決まったの?

 ちょっと、ちゃんと確認しないと。


「まじですか」


 そんな一言だけ返事をしたら、すぐスマホで調べ始めた。

『シャニプリ』が生きているだけで、私も生きていけるんだよ。

 まさか、ライブがあるなんて。

 この上ない幸せ。


 拙者、今まで生きて来れて幸せでござる。

 いかんいかん。

 何か、侍さんが憑依しちゃうくらい、嬉しい。


 本当にライブをするのね?

 ナゴヤドームだ! 今の名をバンテリンドーム!

 これは、行かねば。


 ……けど、お小遣いが無いかも。


 この際、なりふり構ってられないです。

 我が家の財務省を訪問しましょう。

 決戦です!


 勢いよく部屋を出て、一階のリビングへと行く。

 急いで階段を降りると、父と母はリビングにいた。


 クッションに体をうずめて、ゴロゴロと転がってくつろいでいた。

 さっきの私と一緒の恰好だな……。


 そんなことより頼まねば!


「お父様お母様この度は、おねだりがあって参りました」



 寝転がる父母よりも頭を低くして、リビングの床へとおでこをつける。

 まるで、『嫁がせてもらいます』というような。


「どうか、どうか、私を名古屋に連れて行って、そしてライブを見に行くことをお許しくださいませ。ちょっとだけ、その費用を前借させてくださいませ」


 いきなりの事で、父も母も目を丸くしていた。


「いつ、来週? ライブに行きたいなんて、いつ以来かしら?」

「別に行ってもいいけど、どのくらいの値段なんだ?」


 二人とも、ちゃんと話を聞いてくれた。


「なんてアイドル?」

「『シャイニングプリズム』というアイドルグループで……」


 父がスマホで『シャニプリ』のことを調べ始めた。


『シャニプリ』はイケメンぞろいの、キラキラしてるアイドルグループ。

 私の趣味が丸わかりなグループだな……。

 父のことだから、オッケーは中々出ないだろうな……。



「あなた、これじゃない?」


 母が、父のスマホを覗き込んで教えていた。

 父は『シャニプリ』を見つけたのか、険しい顔をした。


「これ、チャリティライブなんだな?」

「チャリティライブ……?」


 私の気の抜けた返事に、父は続けた。


「ライブの収益を全額寄付するらしいぞ」

「そ、そうなんだよ」


「良いアイドルだな。良いぞ、行っても」

「ほ、ほんと?」


 すんなり了承してもらえた。

『シャニプリ』って、そんな活動していたんだ。


 自分のためじゃなくて、恵まれない子供のためにライブをして、寄付をしている。


 ……カッコいい。本当の王子様みたい。


 チャリティ活動か。

 私がライブを見に行くことで、私も嬉しくて、結果的に子供達も救われるんだね。


 チャリティって、これ以上良いものはないかも知れない。

『シャニプリ』のチャリティ活動を応援する! 私、チャリティ大好きになったよ!

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