ベッド
お風呂も上がってもう寝る時間。
二階に上がって来て、自室へと入る。
すぐに部屋のカーテンを閉めて、電気を消してしまう。
そうすることで、外からの月明かりも入らない暗い部屋となる。
そのままベッドに転がって布団をかける。
それで、じーっと動かない。
私が寝る時にやるルーティーンだ。
布団に入っているのだが、いつもより少しだけ涼しい気がした。
階段の温度がいつもより涼しかったのか、布団の中でも汗をかかなくなった。
寝苦しかった八月よりも、エアコンの温度を一度だけ上げて設定した。
エアコンは、ほとんど動いていないのか、音はあまり聞こえなかった。
また、じーっと動かないようにする。
この時に携帯電話をいじると、快眠できなくなるからって携帯電話は枕元に置いたまま。
……。
……うー。
……全然寝れない。
いつもはすんなり眠れるんだけどな。
今日は一日家にいて、ゴロゴロしてたからかな。
疲れてないから、全然寝れないのかも……。
こういう時って、『寝よう』って意識しちゃって逆に起きちゃうんだよね。
……はぁ。これは寝るまで長期戦になるかな。
そう思っていると、階段を上る音が聞こえてきた。
私には、ゆず姉が部屋に行く音だろう。
二階には、私と姉の部屋しかなくて、隣同士だから音が全部漏れて聞こえている。
ゆず姉は、これから受験勉強でもするのかな? 高校三年生って大変だよね。
このまま寝れないのも辛いし、少し遊びに行っちゃおうかな?
そう思い立ったので、ベッドから出てゆず姉の部屋へ向かう。
ゆず姉との約束で、部屋に貼るときにはノックをする決まりになっている。
別に何をするわけでもないと思うんだけど。
――コンコン。
「はーい。どうぞー」
軽い返事が返ってきたので、そのままドアノブを回して入る。
部屋に入ると、シャンプーの良い匂いが香ってきた。
ゆず姉は自分の勉強机の前に座って、早速勉強を始めていたところであった。
長い髪はバスタオルに巻かれて、頭の上に置いている。
そこから優しい香りが来るのだろう。
「ゆず姉って、お勉強中?」
「そだよ。どうしたの、あんずは寝たかと思ったけど、何か用?」
後ろを向いたまま答えてくる。
こういった軽い感じが私は好き。
ゆず姉といると、重い考えが取り除かれるみたい。
「ちょっと、寝れなくて」
「なにか心配事でもあるの?」
「いや、単純に疲れてなくて寝れないだけ」
私がそう言うと、ゆず姉は振り返ってこちらを見てきた。
「あんず、そういう悩みは今だけだよ。ベッドの上でのんびりできるって幸せなんだよ?」
いつになく真剣な顔でゆず姉が言ってきた。
目の下には少しクマがあるような。
連日の受験勉強に疲れているのかな……。
心配になったので、ゆず姉にも私から助言しよう。
「ゆず姉も、たまにはゆっくり寝た方が良いよ? ちゃんと寝ないと頭も働かないよ?」
難しい顔をしたが、何かひらめいたのか、ゆず姉は口を開いた。
「そしたらさ、あんずが寝るまでの間、私は勉強するよ。あんずが寝たら私も寝る。私のベッド使ってていいから寝てみて」
なんだか良く分からない交換条件。
私が寝れれば、ゆず姉も寝れるから一石二鳥なのかな?
促されるまま、ゆず姉のベッドに入る。
なんだか、落ち着くゆず姉の匂いがする。
私のベッドよりも柔らかめで、布団もふかふかしている。
「ゆず姉のベッドって気持ちいいね。私好きだよ。それじゃあ、おやすみなさい」
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