天気予報士

 昨日で夏休みも終わって、今日から学校が始まる。

 世間的には「学校が始まるのがいやだー」とか、「ずっと夏休みが良いー」とかいうけれども、どちらかというと私は夏休みが終わるのが楽しみだった。


 さすがに家の中で過ごすのも飽きてきたしね。

 学校へ行って、またお友達と毎日遊べるようになった方が楽しいって思う。


 久しぶりの学校だけれど、今日はちゃんとみんな来るかな?

 なんだか久しぶりだから緊張しちゃうけれども、楽しみだな。

 最初に合うのは、通学路が一緒な智子ともこちゃんかな? ‌明日香あすかちゃんかな?

 小学校への通学路を一人で歩いてるだけだけど、なんだか楽しい気分になってくる。


 一カ月くらいしか経っていないのに、何だか懐かしいなあ。

 私の日常が帰ってきた感じがする。


 背負いなれたランドセルも、なんだか重く感じる。

 それは、そうか。

 お道具箱とか、色々持ってるからね。


 今日の学校は、どんな面白いことが起こるのかな。

 そう思ってゆっくり通学路を歩いていると、最初に会ったのは哲郎てつろう君だった。


 智子ちゃんじゃなくてちょっと残念だけど、挨拶するのは大事だよね。

 哲郎君にも挨拶しよう。


「おはよう哲郎君。今日から学校だね」

「おはよう希美のぞみさん」


 哲郎君の口元は笑っているけれども、眼鏡の奥は笑っていなかった。

 声の調子もなんだか元気無さそうだし……。


 夏休みが終わるのが悲しい派の人なのかな?


「哲郎君、元気無さそうだけど、大丈夫?」

「大丈夫、気にしないで。僕は雨が降りそうだと体調が悪くって」


 うん? 雨が降りそう?

 こんなに晴れているのに?

 学校に行きたくなさ過ぎておかしくなっちゃったのかな?

 私は不思議だったので、哲郎君に聞いてみた。


「こんな雨が降るの? 哲郎君ってもしかして未来予知できるの?」


 哲郎君の眼鏡の奥が少し笑った。


「いや、未来なんてわからないよ。ただ、風を感じているだけだよ。湿気を帯びた風になってきてるんだ。雨が降りそうな風」


 なんだか、哲郎君がちょっと大人っぽくなったなって感じた。


 風を感じるのか。

 ……うーん。私にはあまりわからないかも……。


「希美さんは、いつも晴れているみたいに明るいから良いね。一緒にいるだけで、僕の体調もちょっと戻ってきたみたいだよ」

「そうなの? ‌元気が出たなら良かったよ!」


 私が笑うと、哲郎君もやっと目を細くして笑ってくれた。


「僕さ、気象予報士の勉強をしているんだ。将来は気象予報士になろうって決めたんだ」


 あんまり哲郎君と話したことは無かったけれども、なんだか元気になってくれてそうだから良かった。


「私はあまりわからないけれど、頑張ってね! 天気予報バンバン当てちゃってね!」


 そう言うと、哲郎君は恥ずかしそうにもじもじしていた。


「天気予報士って、なんだか未来を予想しているみたいでカッコいいよ! そういうの私は好きだよ!」

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