クイズ遊び
海の上を走る電車。
この電車に運転士さんはいない。
電車の先頭車両の大きな窓から東京のビル群が見える。
その間を縫って電車は走っていく。
ピカピカに磨かれたビルのガラスは、電車の車両を綺麗に映しこんでいる。
まるで水の中の遺跡を走っているみたいで、とても綺麗。
私とさやかちゃんは、ゆりかもめっていうモノレールに乗っている。
電車の外の景色を見るのも良いけれど、さやかちゃんとお話するのも楽しい。
さやかちゃんが、パンフレットを見ながら説明してくれる。
「昔、築地市場というものがありました」
さやかちゃんがゆっくりとパンフレットを読み上げていると、ゆりかもめはビル群を抜けて海を走り出した。
「えーとですね、今は市場は別の場所に移転されてしまいました」
パンフレットにそうやって書いているのであろう理解しながらゆっくり読み上げてる。
と思ったら、爛々とした目で私の方を向いてきた。
「さて、今はどこにあるでしょうか!」
中学生ともなれば、ニュースくらい見ている。
私だって答えくらいわかる。
「それは……」
私は答えようとしたけど、さやかちゃんの爛々とした目がとても可愛く見えた。
さやかちゃんのこの目を曇らせたくないなって思ってしまう。
うきうきしながら私の答えを待っている。
「どこかな? わからない」
さやかちゃんは得意気にパンフレットを読みだした。
「答えはね、豊洲なんだって!」
うんうんって頷いた。
楽しそうにパンフレットを眺めている。
「では、続いての問題です!」
問題とその答えを見ながらさやかちゃんは、「へぇー」って呟いている。
もはや一人で楽しんじゃっている。
そうだそうだと、こちらを向いてニコッと笑った。
「築地市場から豊洲市場へ移ったのは、なんででしょうか?」
場所は知っているけど、あまり理由はわかっていないな。
答えを考えていると、さやかちゃんがヒントを出してくれた。
「馴れている場所だし、ずっと築地で良かったって思わないですか? けどある理由があって移動することになったのです」
移動しなきゃいけない理由。
ずっと同じでいられなくって。
変わらなきゃいけないってことだよね。
答えが分からないな。
当てずっぽうで言っちゃおう。
「建物が古くなったからとかかな?」
私の答えを聞いてさやかちゃんはハッとびっくりした顔をした。
そのあと、何でもない顔を装って、眉をしかめた。
「ファイナルアンサーですか?」
さやかちゃん、わかりやす過ぎだな。
きっと、今私が言ったことが正解なんだろうな。
けど、またさやかちゃんの笑顔が見たいって思っちゃう。
「ちょっと待ってね。答えを変えるね。じゃあ、市場が成長して、築地じゃ狭くなっちゃったからとか」
うんうんと、さやかちゃんは頷いた。
答えを読み上げようと、パンフレットの答えを確認してる。
また、ハッと驚いた顔をした。
「
理由は何個か書かれていたらしく、私の言ったのがどちらも正解だったらしい。
ちょっとしょんぼりするさやかちゃん。
築地市場から豊洲市場への移転。
長い年月が経つと変わるものはあるって思う。
けど、私たちの関係は小さいころからずっとそのままがいいなって思う。
私はそういう時は、いつもこうする。
「今度は私からクイズ出すね!」
そう言うと、いつもさやかちゃんは元気を取り戻す。
「私も正解したら同点だね!」
電車の中でするクイズ遊び。
私は、さやかちゃんとそうやって過ごすのが好き。
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