ブランコ

 ブランコって楽しい。

 よく公園で乗って楽しんだな。

 公園の遊具でも人気だから、順番で乗るために並んだりする。


 沢山の子が並んでいたとしても、乗りたくて。

 乗っている時の爽快感ってとっても良かったのを覚えている。


 大きくなった今でも、そんなことが記憶には残っていて。

 ブランコの列に並んでいると、そんなことを思い出す。


「高校生にもなって、ブランコに並ぶなんて思わなかったね」


 一緒に並ぶ和子かずこに話しかける。

 メガネをかけておさげ髪の和子。

 山を登るときには、きっちりと長袖長ズボンという恰好を守っている。

 山を登り終わった今でも、きっちりその格好をキープしている。


 そういえば、毎日玄関を出るときは右足からとか。

 そんなことを言ってたな……。

 とっても真面目なんだよね……。


美幸みゆきさんも、ワクワクしていらっしゃいますか? ブランコに並ぶって、並んでいる時からワクワクがとまらないものですね!」


 大人しそうな見た目で、喋り方も綺麗な言葉使いできちんとしているけれど、好きなことになると早口になるところが欠点と言えば欠点で。

 今並んでいるブランコに乗りたいと和子に誘われて、そのためにこんな山の上まで登って来たのだ。



「アニメでも、すごく長いブランコに乗っている女の子がいるけど、あれってすごい速さらしいよね、楽しそうに笑っているけど、ブランコの吊るされている長さを計算すると、時速60キロを超えるらしいんですよ」

「時速60キロ……。それって生身で平気なものなの? 絶叫マシンとどっちが早いのかな……?」


 和子はノリノリで、私はビビりまくりで。

 ここのブランコは、某アニメのブランコを模したブランコ。


 このブランコに乗った傍から、バンジージャンプのように人が崖から落ちていく様を見せられている。

 その後は、ブランコに揺られているのか分からないが、絶叫だけが聞こえてくるんだよ。


 最近では『アクティビティ』なんて呼ばれているけれど、『絶叫系の乗り物』っていう呼び方はどこへ行ってしまったんだろう……。


 こう言うのが好きな人にとっては、絶叫じゃ無いのかもしれない。

 ただ単に『アクティブ』なだけなんだろうな。


「美幸さん、さっきカップルが二人で一緒に乗ってましたね! 私たちも一緒に行って友情を深めましょうか!」


 和子さんは、ここに来てからなんだかアクティブです。

 期待でキラキラに輝く目をこちらに向けてきた。

 一人で乗るよりかは、怖さがまぎれそうだけども。


 まぁ和子さんが楽しむことを目的として来たわけだから、一緒がお望みとあれば。

「一緒でいいですよ、他にリクエストはありますか?」


 和子さんはとっても嬉しそうに笑ってくれた。

「ありがとうございます! まず一回目は二人で一緒に前向きで乗ってですね、二回目は後ろ向きで乗るっていうのをしてみたいんですよ!」


 私は言葉が出なかったが、精一杯リアクションを絞り出した。

「和子さん……。アクティブですね……」

「アクティブでしょうか? 私はインドアな方ですが、ブランコだけは好きなのです!」

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