ヨーヨーすくい

 家のすぐ近くでお祭りがやっている。

 神社とかではなくて、住宅街の中。


 町内会館を中心にして、あまり車通りも無いような道路を封鎖して、そこをお祭り会場にして。

 お祭りらしく屋台もあるけど、やっているのは全員町内会の人。


 家のすぐ近くで歩いて来れるので、妹を連れてお祭りへ来てみた。

 車が通れないように、三角コーンを置いて張り紙している。


 まだ早いと思ったけど、既に人がいっぱい来ていた。

 電柱と電柱に結ばれて、提灯がいっぱい吊り下げられていた。

 歩いて出店をちらっと見ると、どのお店にも『食券購入が先! 食券はあちら→』と張り紙がしてあった。


「じゃあ、まずは食券を買いに行こうか」

「うん」


 お祭りには、妹を連れてきた。

 家を出るときに、お母さんからはお小遣いをもらった。

 遊んでも食べても好きにしなさいって、千円もらった。


 正直これで遊ぶって、お母さんは近頃の物価をわかっていないのかなって。

 そんなことをぐちぐちと言ってたら、追加で500円もらった。

 けど、これで足りるかはとっても不安。


 この前言った私のお祭りの記憶では、一つ500円くらいするんだよね。

 けど、これ以上はもらえないなと思ってあきらめた。


 とりあえず、食券を買う列へと矢印を辿ってきて並んだ。

 列が長そうだけど、一体このお金でどのくらい遊べるんだろうなこれだけ並んで、焼きそば一つ買ったら終わりとか無いよね。

 そんな不安が込み上げてくる。


「何があるのかな見てくるから、並んでいてね!」

「あいっ!」


 返事が良い妹。

 せめてこの子には何か遊ばせてあげたいな。


 食券を買う列の先頭へと行くと、食券を売っている机があり、そこに値段が書いてある紙が貼ってあった。

 どれどれ。


 ◆食べ物

 ・かき氷50円。

 ・ラムネ50円。

 ・焼き鳥50円。

 ・フランクフルト50円。

 ・焼きそば200円。


 ◆遊び

 ・ヨーヨーすくい50円。

 ・スーパーボールすくい50円。

 ・わなげ50円。


 分かりやすい値段設定。

 どれも、思ったよりも高くない。


 これだったら、いっぱい買えるし、いっぱい遊べる。

 二人で色々食べても、ヨーヨーすくいやり放題ってくらいできそうじゃん。

 お小遣いこんなにもらわなくても良かったかもな。


 チェックできたので、妹のところへと戻った。

 列もスムーズに進んでいるようだった。


「今日ね、お母さんからいっぱいお小遣いもらったから、何でも好きなのをやっていいよ!」

「やった! 私ね、一回でいいからヨーヨーすくいやりたいんだ」


 ふふ。

 この子も遠慮がちだなー。

 本当はもっともっと遊びたいんだと思うけど、いつも我慢してる。

 そんな妹の姿がかわいく思えて、妹のことを撫でてあげた。


「どうしたのお姉ちゃん?」

「今日は何回でもやっていいよ?」


「じゃあ、二回やる!」


 それでも、二回。

 我が妹ながら、とっても可愛い。


「お姉ちゃんの分の二回も分けてあげるから、もっともっとやって良いよ!」


 そういうと、逆に困惑させてしまったようだった。


「はは。違う遊びもあるし、いっぱい遊ぼうか。わなげもスーパーボールすくいもあるよ!」

「やっていいの?」


 ふふふ。

 喜んでる、喜んでる。


「けど一番は、やっぱりヨーヨーすくい! 私、ヨーヨーすくいが大好き!」

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