マッサージ

 お昼を過ぎて、夏の暑い日差しが本性を現す時間。

 窓にはレースカーテンがかかっているけど、じりじりと太陽に焦がされているみたい。


 太陽の光を受け止めきれなくて、部屋の中に明るさが入ってくる。

 こんな日の外って、とっても暑そうだな。

 私は絶対外に出たくない。


 日が落ちるまで、自習室で勉強していこうかな。

 グラウンドで活動している部活の声が自習室まで入ってくる。

 暑い日でも声出しして頑張ってる。

 そういうの、尊敬しちゃうな。

 外に出てるだけでもすごいなー。


 そう思っていると、自習室のドアが開いた。

 律儀にお辞儀をして。

 小夏こなつちゃんだ。

 お辞儀した頭を上げると短く切られた髪の毛がふわっと揺れた。

 日に焼けて真っ黒な顔、手足。

 ソフトボール部が終わったから、勉強しに来たのかな?


小夏こなつちゃん、部活お疲れ様。こう暑いと、ソフトボール部っていうのも大変だね」


 私に気づいたみたいで、笑いなかまら私の席のところまで来た。


「隣、座ってもいい?」


 どうぞどうぞと、椅子を引いてあげて両手を開いて椅子を差し出した。

 にっこり笑って、椅子に座った。


「今日も部活疲れちゃったよ、練習試合でさー」

小夏こなつちゃんって一年生なのに、試合に出てるの?」


「もちろん! ‌私ピッチャーだからさ。肩使うからすごくこってるよ」


 そういうと、Yシャツを少しずらして肩を見せてくれた。

 触らなくても、筋肉がついているのはわかる。

 見せてくれるから、ちょっと触ってみたくなった。


「どれどれ? ‌本当かな?」


 席を立ちあがって、後ろに回って肩を触ってみる。

 すごく硬い。


「これで力入れてないの? ‌すっごい硬い! ‌叩いた方が良いかも?」


 とんとんと肩を叩く。

 私の弱い力だと、全然ほぐれない。

 それでも、気持ちよさそうにしている。

 昔、お父さんの肩を叩いた時みたいだな。


「ありがとう」

「気持ちいいなら良かったよ」


 私が椅子に座ると、今度は小夏こなつちゃんが立った。


「交代!」


 小夏こなつちゃんは私の後ろに立った。

「ぷにぷにだね」


 強い握力で、私の左肩をつぶしてくる。


「イタイイタイ。一応これでも勉強して肩こってると思うんだけどな」

「まだまだだね!」


 小夏こなつちゃんが、右肩も揉んでくれると触ってきた。


「あれ? ‌こっちはすごい硬い!」

「それそれ、多分私の勉強のコリだよ」


 コリをほぐすようにもまれて気持ちいい。

 人にマッサージしてあげることはあっても、してもらうことってほとんどないから。

 とっても良い気持ちだった。


「じゃあ、今度は私がしてあげるよ。手を出して」


 小夏こなつちゃんに席に座ってもらって、腕のマッサージをする。

 そうやって二人で交代にマッサージしあった。


「よし、体は万全だね! ‌じゃあ勉強しようか!」

「うん!」


 凝った肩も、腕も。

 マッサージするって、気持ちもリフレッシュされて。

 こういうことしあえる友達がいるって、良いなってあらためて思った。

 マッサージって好きだなぁ。

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