お母さん
小学校が休みだとやる事も無い。
外は暑いから遊びに行く気も起きなくて。
今日はプールも休みで。
朝起きて、ラジオ体操が終わるとテレビを見てだらだらと過ごす。
テレビの前で寝転がっていると、お母さんがやってきた。
「みっちゃん、今日はいっぱいハテナを集めてみよう!」
お母さんの考えは大体わかるんだよね。
『夏休みの自由研究』って本を持って、そんなことを聞いてくるなんて、分かりやす過ぎ。
私が暇だと思って。
お母さんったら……。
夏休みの宿題を手伝ってくれるのはありがたいけども。
何でも答えられるといった顔をして、お母さんは聞いてきた。
「ほらほら、何か思いつくこと言ってみて?」
しょうがない、付き合おう。
「水ってなんで透明なんだろうね?」
私が前から思っていた疑問。
こういうのを解決できるなら、ちょっとお母さんを尊敬しちゃうな。
そう思ったが、お母さんはちょっと焦っていた。
手に持っていた本を広げてパラパラ見ているが、私のした質問については載っていないのだろう。
「うーん。それは一つ案として持っておこうね! 他にも家の中とかを探して疑問とかないかな?」
家の中をパーっと見渡す。
私の目の前にあるものに目が留まったので聞いてみた。
「テレビってなんで、映像が動くの?」
「うんうん。そういうの!」
そう言いながらパラパラと本をめくるが、また載ってなかったらしく、笑ってごまかしていた。
「疑問に思うことって大事なんだよ。興味があるっていうこと。もっと、ハテナを集めてみよー!」
子供からの質問だって楽じゃないんだよ。
お母さんが答えられそうな質問って、なんだろうなー。
うーん……。
そうだ!
聞いてみよう。
「何で、私のお母さんは、お母さんなの?」
お母さんは今までと違う、答えられそうな質問だったので、少し嬉しそうに口角が上がった。
「意地悪して聞いてきたかもだけど、それはお母さんすぐに答えられるよ。私が、あなたを生んだからよ」
得意顔でお母さんは答えてくれた。
今までの質問とは違って自信満々。
お母さんが楽しそうだと、私もちょっと楽しくなってきた。
「じゃあ、何で私のお父さんは、お父さんなの?」
「うーん、お母さんとお父さんが結婚したからかな?」
ちょっと悩むようにしてお母さんは答えた。
ちゃんと答えてくれるなら、もっと気になる事を聞こう。
「なんで、お母さんとお父さんは結婚したの?」
「みっちゃん、難しいことを聞いてくるのね。
お母さんはお父さんが好きだからだよ」
「じゃあ、何で好きなの? どこが好きなの?」
お母さんの顔が固まった
「みっちゃん。ストップしましょう。これ以上はダメ。お母さん恥ずかしいから」
「えーなんでー? 教えてよー! お父さんとお母さんはどこで出会って、どんなところが好きになって付き合ったのー?」
恥ずかしそうにするお母さんを見ているのも、楽しかった。
自由研究に、お母さんの馴れ初めを書くわけにもいかないけどね。
「疑問に思うことって大事って言ってたじゃん、私お母さん好きだから知りたいな!」
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