サンキュー
学校帰りに駅前を歩いていると、金髪で目が青い女の人に声をかけられた。
「エクスキューズミー?」
「
「
英語の授業で覚えていることなんて、何にも無いよ。
……ええと。
あっ。一つだけあった!
私は喋れる英語があったことに安心して、笑顔で答えた。
「アイムファイン!」
私の返事を聞いた外国の人も、にっこりと笑ってくれた。
「ミートゥー!」
良かった。
何かよくわかっていないけど、コミュニケーション取れてるみたい。
綺麗な人だなぁ。
外国の人は、地図を見せてきた。
地図の場所を指差して、訴えてきている。
せっかくコミュニケーション取れてたのに英語を使わなくなっちゃった。
どうしたんだろう?
「沙耶香、道を聞かれてるみたいだよ、なんか答えてあげなきゃ」
「そうだね。そこに行くには、この道を真っすぐ。英語で言わなきゃか。うーん……」
私と栞が困っていると、外国の人は自分のスマートフォンを取り出して話しかけた。
すると、スマートフォンから声が聞こえてきた。
「スマホを使えば、翻訳されるのでそれでお願いします」
海外旅行が慣れているのか、スマホで日本語翻訳させて伝えてくれた。
スマホに向かって話しかけて欲しいと、いう感じで私に画面を向けてきた。
ここに日本語で言えばいいんだねきっと。
「この道を突き当りまで真っすぐ行って、ぶつかったところを右に曲がってその後五分くらい歩くとあります」
ちょっと長いかなと思いながらも、そうやって外国の人のスマホに伝えた。
少し待つと、スマホが英語に翻訳してくれているらしく、何やら音声が聞こえた。
うん。何を言ってるのかは、全然分からなかったけど、スマホが喋るのに合わせて私は一生懸命にジェスチャーをして『真っすぐ』とか、『右に曲がる』とかを表した。
「沙耶香、道しるべ的なのも言わないと迷っちゃわない?」
「そっか。もう一回言わせてください!」
私は、外国の人のスマホを指さして、その後自分の口元を指して、「喋りたい、喋りたい」って日本語で言ってみた。
なんとかジェスチャーで通じたみたいで、外国の人は不思議がりながらもスマホを私に向けてくれた。
「突き当りを曲がったあと、三分くらい歩くと緑色のコンビニが見えます。その後もう少し歩くと、今度は青いコンビニが見えるので、その隣にあります」
スマホが私の言葉を変換してくれた。
外国の人に私の補足説明が伝わったみたいで、目を大きく開いてオーバーなリアクションで嬉しがってくれた。
「サンキュー!」
「サンキュー!」
外国の人がお礼を言ってきたので、私も思わず同じことを言ってしまった。
とても嬉しそうに笑って、道を進んでいった。
何とか乗り切れたっていうのと、伝えたいことがちゃんと伝わったことの喜びがこみ上げてきた。
最後に外国の人からもらった言葉。サンキュー。
それを噛みしめていた。
お礼の言葉って、どの言語でもいいなって思った。
言葉は違えど、感謝の気持ちって嬉しくなる!
「栞、途中アドバイスくれて、サンキュー!」
「なにそれ? 何で英語なの?」
私と栞は、笑いあった。
お礼の言葉は、言う方も嬉しい。私の大好きな言葉。
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