ハコボーイ
今日は部活休みなんだけど、箱崎君は部室でゲームをしてる。
チラッとゲーム画面を見ると、箱のようなキャラクターが動いていた。
「可愛い、何それー?」
「ゲーム」
そっけない態度……。
「なんか、箱崎君のイメージと違うね?」
「そんなことなくね? 俺可愛いもの好きだし」
そういうこと、コッチをまじまじと見て言わないでよ……。
なんか、勘違いしそうになっちゃうんじゃん……。
冷静になろう……。
「これ、どうやって遊ぶの?」
「こいつ歩かせて、ゴールを目指すの」
そんな簡単な説明。口下手とかじゃなくて、説明下手過ぎますよ……。
整った顔にごまかされちゃうけど、箱崎君ってちょっとポンコツなところあるんだよなー。
「やってみる?」
「え、私にやらせてくれるの?」
たまにこういう優しいところもある。
「お前は、2Pな」
ヌンテンドースイッチから、一つコントローラーを外して私に渡してくれた。
「はい。画面立ててやるから、ちゃんとやれよ」
なんで上から目線なの? と思いながらも、箱崎君らしいなと思った。
こんな可愛いゲームなのに、ちゃんとやるってなんだろ?
小さいゲームモニター。
二人で見ようとすると、どうしても顔が近くなる。
チラッと箱崎君の方を見ると、箱崎君は画面をしっかり見つめていた。
横顔、カッコいいな……。
私が見つめていると、箱崎君は私に気づいたみたいで目が合った。
近いよ顔……。
そんなに見つめないで……。
けど、目を逸らせない……。
この距離で、見つめあう男女。
もしかして、これって……。
私は、目を閉じようとする。
「おい! 画面をちゃんと見ろ!」
「……え、あ、はい」
目の前にあった、箱崎君の顔は画面を見つめていた。
画面を見ろって、怒ってたのね。
ドキドキして、損したな……。
「二人じゃなきゃ進めないんだよ! 二人で協力しないと!」
これが二人の初めての共同作業……。
そんなことを考えて。
「お前は下な。俺が上」
「はい」
私は、箱崎君の言われるがまま。
何ということは無い。
ハコボーイというゲーム。
キャラクターは箱の体をしていて、そんなキャラクタ―動詞の体を踏み台のようにして高い場所へと昇っていくのだ。
「いいね!」
そう言って箱崎君は、笑ってくれた。
ふふふ。
「俺が伸びるから、その先を上手いことやってくれ!」
箱崎君、説明が相変わらず下手です……。
それに、さっきからの言動。
部室の外の人が聞いたら、絶対に勘違いする人がいるって。
はぁ……。
私が補足しておく。
「このハコボーイ君は、箱の体が伸びるのですね。それで、伸びた箱の体を踏み台にして、遠くの岸へ渡ると。そう言うことですね」
「いきなり説明口調になって。どうした? 暑くて頭おかしくなった?」
いえ、あなたの語彙のせいですとは言えず、頷いておいた。
「それはまずい!」
箱崎君は、一生懸命夢中になっていたゲームのコントローラーを置いて、立ち上がった。
「服、脱げ脱げ」
「え、いやいや、え?」
箱崎君は、いたって真剣な顔だった。
「熱中症は、危ない。俺そっち向いてるから」
「いや、その……」
「学食の所で、氷貰ってくるから、服脱いでおけよ」
そう言って、部室を飛び出していった。
箱崎君って、口下手だけど、優しさは伝わってくる。
……ありがとう。
ハコボーイ。
このゲームで箱崎君は助け合うってことを覚えたのかな。あの人単純そうだしな。
あらためてみると、可愛いキャラクター。
このキャラクターが、私たちの恋のキューピットになったりしてね。
四角いからだで、動きもぎこちない。出来ることも限られてたりして。そのまんま箱崎君みたいだね。
ふふ。私のハコボーイ君。大好き。
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