かき氷

 日も落ちかけた夕暮れ。

 夏祭りといえば、やっぱりかき氷だよね。


 私は、あずさと一緒に近所の夏祭りに来ている。

 二人揃って浴衣を着て。

 誰に見せるわけじゃないけど、やっぱり夏祭りっていったら浴衣だよね。

 お祭りの気分を満喫するのが好き。


「せっかくだから、かき氷食べよ!」


 かき氷屋さんの列の最後尾に、梓と一緒に並ぶ。

 私の住んでる町は大きくないから、お祭りの規模も割と小さめ。


 出店も数えるほどしか出ていない。

 盆踊りを踊る場所だって、そこまで広くなくって。

 場所だって出店のすぐそばにある。

 みんな祭囃子に乗って踊っている。



 ドドンガ、ドン!


 ♪〜


 月が〜〜

 出た出た〜〜


 〜♪


 ドドンガ、ドン!



 盆踊り会場の真ん中にやぐらが立ててあって、そこに元気なおじいちゃんが乗っている。

 それで、盆踊りの音楽に合わせて大きな和太鼓を叩いている。


 太鼓の達人よりも大きめの太鼓。

 やっぱりあれが本物の太鼓って感じだよね。


 心臓の鼓動に、新たな鼓動が追加される感じ。


 ドドンガ、ドン!


「梓は何味にする?」

「私はメロン味が好きだなー」


 なるほど。

 メロン味って緑色をしてて、食べると舌も緑色になるんだよね。

 それもまた楽しかったりして。


 イチゴ味だと赤いから、舌の色もあまり変わっていないように見える。


 やっぱり何と言っても、変化を楽しめるのは青色。

 そう、ブルーハワイ味!


「私は、ブルーハワイにしよう!やっぱり一番夏って感じだよね!」


「おじちゃん、メロン一つと、ブルーハワイ一つ下さい!」

「あいよっ!」


 注文を受けてから、使い古されたかき氷器を使って一気に削っていく。

 削る前の氷は、濁りのない透明をしてて、それをすごい速さで回転させて削っていく。



 ガタンガタンガタン。


 ショリショリショリ。



 削られる前はすごく透明なのに、削られた後は少し白く見える。

 粉雪のように乾いてるような氷が降り積もっていく。


 かき氷って削ってるところも見入っちゃうくらい好き。

 暑い日に氷を削る音と、この見た目。

 とっても良いです。



 私も梓も見とれてしまっていた。


「綺麗だね」

「とっても綺麗」


 そんな言葉に気を良くしたのか、かき氷屋さんのおじちゃんはニヤッと笑って、前の人達よりもかなり多めに氷を盛ってくれた。


「可愛いお嬢さん達にはサービス!」


 私は、梓と目を見合わせて喜んだ。


 削り終わったかき氷の上から、シロップをかけていく。


 まずは梓の分。

 緑色の液体が氷の山のてっぺんからかけられて、シロップがかかった所は山を凹ませてカップの中へと入っていった。


 とても美味しそう。


 私の分は青色の液体。

 少し高いところから、かけてくれて。

 やっぱり氷の山のてっぺんを凹ませていく。


 それぞれ長めのプラスチック製のスプーンを挿して出来上がり。


「お待ちどうさま!」

「「ありがとうございます!」」


 おじさんからかき氷を受け取ると、お祭り会場の端っこの方へ行き、食べ始めた。

 私の分と梓の分と、少しづつ食べあいながら。


 ドドンガ、ドン。


 町の人が踊る姿を見ながら食べるかき氷。

 お祭りだと、尚のこと美味しく感じる。


「かき氷、美味しいね」

「私、やっぱりかき氷好きだなー」

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