梅干しのお菓子

 とある日の部活帰り。

 今日は定時制の生徒が体育館を使うからって、少し早く部活が終わった。

 まだ日も落ちていないので、明るい夕焼けが見える。



 私達四人は、学校前にあるバス停の一つ前のバス停を目指して歩いていた。

 そっちのバス停前には、コンビニがあるのだ。

 学校帰りのバスを待つ途中、みんなで買い食いをするのが定番になっている。



 コンビニに着くと、涼しい風が吹いてきた。

 冷房の効いたコンビニで待てるのも、このバス停の良いところだったりする。

 そんな中、「今日は何を買おうかなー」って各々食べたいものを探し始める。


「あっ! これ! 小さいころ好きだったお菓子!」


 春子が見つけたお菓子、私も知ってる。

 梅干しのキャラクターが描いてあって、そいつが酸っぱそうな顔をしているパッケージ。

 三つガムが入っていて、その中の一つだけすっごい酸っぱいガム。


「小さいの時に食べたなぁ」


 私酸っぱい物苦手なんだよな……。


 そう思ってると、後ろから夏子がやってきた。

「それいいじゃん! みんなで分け合って食べよ!」

「けど、私達四人だよ?」


「じゃあさ、じゃんけんで負けた人から食べて行こ!」

「最後まで勝った人は食べれないから、誰が酸っぱいガム食べたかを当てるっていうゲームしよっ!」


「負けた人が何か罰ゲームね! 好きな人について語ってもらいましょうー」


 四人だと、物事がスルスル―っと決まっていく。

 そのガムを買って、バスを待つことにした。



「じゃんけんで負けた人から、どれか一つ食べる。リアクションは隠してね。じゃあ行くよー、じゃんけんぽん!」


 最初は、春子が負けた。

 悔しそうな顔をしながら、一つを選んで食べた。

 けど、涼しい顔をして笑ってる。

 これは、酸っぱくなさそうだな。



「次どうぞー?」

 春子は余裕があるように、次のじゃんけんをするように促した。



 じゃんけんで次に負けたのは、夏子。


 夏子はガムを口に入れると、少し怪しい顔つきになった。

 夏子は酸っぱいのに弱いもんね。これは我慢してる顔つきなのかな?



 最後、私と秋子のじゃんけん勝負は秋子が負けた。


 秋子は、最後の一つのガムを摘まんで食べた。

 これまた、秋子は無表情であった。



 最後までじゃんけんに勝ってしまったな。

 私が当てるのか……。


 酸っぱさも、とうになくなっているはずだけど、今さらみんなの顔を見てみる。

 負けたく無いし、何か手がかりが無いかな……。



 一人一人の顔を、じっくりと眺める。

 みんなポーカーフェイスだなぁ……。


 そんな時、夏子の目が泳いだのを私は見逃さなかった。


「夏子が酸っぱいのを食べたんでしょ!」

「……当たり」



 夏子は少ししょんぼりした顔をしたが、すぐに明るい笑顔に戻った。


「しょうがないか……、それじゃあ話しましょうか、私の好きな人」



 これだけ一緒にいるんだもん。

 好きな人のことを語る罰ゲームって言っても、お互いに誰が好きな人が誰だかなんてわかってる。


 楽しそうに話す夏子と、それをみんなで聞いてバスを待つ。

 もうすぐ沈むかと思った夕日も、まだまだこちらに明るい顔を向けていた。


 茜空の中、四人でわいわいと過ごす部活帰り。


 こんな遊びができるのも、酸っぱい梅干しのお菓子のおかげだね。

 感謝しなきゃ。

 梅干しのお菓子、好きだよ!

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