太陽が照りつける浜辺。

 強い日差しがじりじりと肌を焦がす。


 太陽からの日差しで熱くなった浜辺に、レジャーシートを敷いて、そこに寝っ転がりながら空を見上げてる。

 レジャーシートの上からでも、砂浜の熱を感じる。

 太陽の日差しと背中からの熱と、どちらからも私をこんがりと焼いているようだ。



 見上げる空はどこまでも澄み渡って。

 夏特有の入道雲が遠くの空に浮かんでる。

 ちょうど江ノ島の上の方に被さるように見えて。

 なんだか、ホットケーキの上に乗っかったアイスクリームみたい。

 美味しそう。


 隣に寝転がってるあきら君に話しかける。


「空って、どこまでも広くて自由ですよね」

「空はいいよね、何にも遮るものがない」


 私達は、海まで来てるのに空ばかりを褒める。



 顔の横に置いてあるペットボトルを飲もうと起き上がる。

 目の前に広がるのはだ。


 そう、私達が空ばかり褒めるのは、海に人が沢山過ぎるからだ。

 こんな状況だと自由を感じられるのは空だけ。

 海は人でごった返している。


 このレジャーシートの隣にもすぐテントが置かれてる。

 海ってこんなに窮屈だったっけ?



「海の日だからって人多過ぎないですか?」

「……こんなにいっぱいだとは思ってなかったんだよ」


 明君は申し訳なさそうにしてる。

 別に明君のせいじゃないんだけど、解放感を期待して来てたからちょっと残念ではある。


「空ばかり眺めるっていうのも、楽しかったりするかもしれないです」


 実際に空は、とても綺麗で。

 目をつぶれば、風はとても心地よい。


「けど、せっかく来たし、少しだけでも海に入ってみる?」


 明君は、私の幼馴染。年が一つだけ上なんだ。

 ちょっとリードしてくれる。今日海に誘ってくれたのも明君。

 一生懸命に楽しませようとしてくれているんだな。


 明君を見ると、こんな状況でも精一杯の笑顔を作ってる。

 これに乗らないのは、幼馴染失格でしょう。

 私も、精一杯楽しむようにします。


「そうだね! 明君、海行こう!」


 私から先に立ち上がって、明君の手を取る。

 砂浜から身体が解放されて、吹き抜ける海風に肌が涼しさを感じる。


「明君、お決まりのやつやろう! 海まで競争だよー! 遅かった方がジュース奢りね!」

「ちょっと、待って、先に走り出すのズルいってー」


 人が多いから、真っすぐ海には走れなくって。

 テントやレジャーシートの合間を縫って、駆けていく。


 こういう時は、身体が小さい方が有利だったりするもんね。



 足が海に着いた。


 よーし、私の勝ちだね。


 振り返ると、明君が見えなかった。

 あれ? どこだ?


「俺の勝ちかな!」


 いつの間にか明君の方が先に海に入っていた。


「なんでですか、早いですよ! 私、フライングまでしたのに」



 海は、狭いと思っていた。

 けど、そう感じてるのは、遠くから見てたからかも。

 実際に海に入ってみたら、深さもあってとても広く感じた。


「行ってみたら、そこでわかることもあるんだな。海ってやっぱり広いよ! 何事もやって見なくちゃ始まらないね! 来てよかったね!」


 明君のそういうところが好きだな……。



「明君、海に誘ってくれてありがとう。……好きだよ。……いや、好きっていうのは、海の事だからね!」

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