ラジオ放送

 爽やかな夜風で、部屋のカーテンが揺れている。

 夜は涼しいからエアコンつけなくても、窓を開けていれば気持ちがいい。

 月明かりだけじゃ流石に足りないから、卓上ライトはつけてる。


 静かな夜に、軽やかに聞こえるBGMが好き。


 〜♪



 始まった、始まった。

 これを待ってました!



 ――今日も始まりました。

 本日のお相手は、DJマサがお送りします。

 今日は、『ラジオの日』らしいですね。


 これを聞いてる皆様も、ラジオがお好きなんですね。

 こんな夜更けまで聞いて下さって、どうもありがとうございます。

 今後とも、よろしくお願いします。


 それでは、最初のコーナーにいってみましょう――



 深夜ラジオって面白いよね。

 私ラジオが好きで、夜中は勉強しながら聞いているんだ。



 ――最初は、お便りのコーナーです――



 ラジオに投稿してる『ハガキ職人さん』って面白いんだよねー。

 私の好きなお便りコーナーだ。

 勉強しなきゃなんだけど、ついつい聞いちゃう。



 ――忘れ物をしたと思ったら、彼氏が持ってきてくれて……――



 ふふっ。なんだそれ?

 本当にあったのかって思っちゃうよ。



 ――それでは、一曲お聞きください――


 〜♪



 流行りの音楽が流れてきた。

 この間に勉強進めちゃおう。



 ◇



 ふぅ。結構勉強進んだぞ。

 私、やればできる子だね!


 ~♪


 ――それでは、応援お便りのコーナーです――


 おお! ‌キタキタ!

 このコーナーが一番好き!

 頑張ってる子の話聞くと、こっちも頑張ろうって思うもんね。

 一旦休憩しよう。



 ――今日の頑張ってる子。


 眼鏡をかけて、おとなしい子で。

 髪はセミロング、ちょっと小柄で部活は帰宅部。


 ささらちゃんって子です――



 ……いや、それ、私の名前じゃん。

 『ささら』って、珍しい名前は、中々いないよ。

 私のことが言われてるの?

 というか、個人を特定しすぎでしょ……。



 ――頑張っている、その子に届けたい。


 いいですね、どんな応援なんでしょうか。


 ちょっと頑張り過ぎな、ささらちゃん。

 この前も、体育の授業で走っていたら頑張り過ぎて転んじゃってて。

 けど、すぐに起き上がってまた走り出したんです――



 ……やだ、恥ずかしい。誰かに見られてたんだ。



 ――授業でもいつも頑張ってる姿を見てて。居眠りなんか一切せずに黒板を丁寧に書き写してて。

 この前ノート見せてもらったらとっても綺麗にまとめてたんです。

 けれど、ささらちゃんはテストだと赤点が多くて――



 ……やっぱり、完全に私のことだね……。

 私、いいとこないじゃん……。

 今も赤点にならないように頑張って勉強しているのよ……。



 ――けど、そういう頑張るところがとっても好きです。

 今もこのラジオを聞いて、勉強を頑張っていると思います。

 頑張り続ける君は、絶対今度は良い点取れるはずだよ!――



 ……このお便り、誰だろ。

 ……私のこと、励ましてくれるのありがたいな……。



 ――PS、僕も今ラジオ聴きながら一緒に頑張ってます! 安太郎より――



 ……あいつ。……電波に乗せて何やってるんだよ。



 ――ささらちゃん、聞いてるかな? 頑張ってね! DJマサも応援してるよ!

 リスナーのみんなも、きっと応援してる!

 次はきっと良い点取れるはずだよ! 頑張り続けている人は絶対報われるからね!――



 ……まったく。こんなことしてくれるなんて。



 ――そうそう、その子、今日誕生日らしいんですよ。

 このラジオがとっても好きらしくて。

 だから、これが僕にできる、僕がすることが出来る最高のプレゼントだって。


 頑張る君を応援してます!


 というお便りでした。

 ささらちゃん、誕生日おめでとう! 今日もラジオ聞きながら頑張ってね!――



 ……もう。あいつ。

 明日どんな顔で会えばいいんだよ……。まったく……。



 ――続いてのお便りはこちら――



 いつでも、どこでも、電波は飛んでて。

 何気ない日常に入り込んできて。


 聞こうと思えば聞けるんだけど、聞こうと思わなきゃ聞けない。

 そんなに日常の中にある声。


 私はちゃんと聞いてたよ。届いたよ。安太郎。


 よし! 今日はもうちょっと頑張ろうかな!

 ありがとうね。



 ……私はラジオ放送が好きです。

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