ラーメン

 期末試験の期間中は、午前中で授業が終わるんだ。

 部活も無いし、空は晴れてるし。

 テストもちゃんとできたし。

 すごい解放感だなー。



 いつも通り、私達は四人でのんびり帰る。

 まったりして。何にも心配事が無い。

 こんな生活が続けばいいなー。


「……って言うのがあってねー」

「私、それ食べたことあるよ、すっごいよね!」

彩香あやかも、きっと食べたことあるよね?」


 あ。やばっ……。

 ボーっとして話聞いてなかった……。

 聞いてなかった時って、よく話を合わせちゃうんだ。

 あまり良くない癖だけどね。


「うんうん、そうだねー」

「じゃあ、今日みんなで行ってみよー!」


 どこにだろう。食べ物屋さんの話かな?

 駅に向かって歩くと途中にあるラーメン屋さん。

 これを食べに来ようって言ってたのか。

 全然私は食べたこと無いですけども。


 なになに。二郎ラーメン。

 なんだか中華みたいなものかな?

 けど、並んでいるのはガテン系な人ばっかり。。

 二郎君は、そういう系?


 ラーメン屋さんに近づいてみてわかったけど、油がすごいです。

 ガツンとにんにくの香りもして。

 それと、豚骨系の濃い香りがあたりに充満している。

 そんなラーメン屋さん。


 夏なのに、並んでいる人がいっぱいいる。

 暑いときに熱い物を食べるなんてすごいなー。

 ラーメンっていうのは奥が深いのですね。


「彩香、楽しみだね」

「う、うん」


 私、ラーメン自体は好きだけど。

 家でしか食べたことないなー……。


 並んで待っていると、十人単位くらいずついっぺんに席へと案内される。

 私たち四人組も一緒に呼ばれたので入っていった。


 店の中には、ラーメン雑誌から出てきたような人たちがいっぱいいた。

 頭には黒いタオルを巻いてる。

 みんな黒いTシャツ。これが制服なんだねきっと。


「じゃあ注文をこっちからとります。お好みはどうしますか?」


「ヤサイマシマシニンニク」

「ヤサイマシマシアブラ」

「ヤサイマシマシニンニクアブラ」


 何やら呪文みたいに唱えて。

 私、注文の仕方分からないや……。

 来たことあるといった手前、どうにかしないとな……。


『ヤサイマシマシ』って、常連さんっぽい人たちはみんなそう言ってる。

 私もそれを言ってみよう。



「ヤサイマシマシ」



 私がそう言うと、店員さんはギョッとした顔をした。

 けど、すぐにキリっとして笑った。


「あいよっ!」


「……私、普通で」

「私も同じで」

「私も」


「あいよ!」



 ◇



 暫く待っていると、注文した品が机へと運ばれてきた。

 えっと……私のだけ、とってもでっかい。

 外で食べるラーメンってこんなにすごいんだね……。


 皆のも次々と運ばれてきたが、普通サイズだった。


「彩香の、すっごい大きいね!」

「え……? ははは……。私ラーメン好きなんだー……」


 ……本当は小食だけど。



 一度来たことあるって言った美紀みきは、私の表情を察してくれた。


「彩香、初めて来るんだったらそう言ってくれればいいのに」

「……ごめん。初めて来てます」


 美紀は笑って答えてくれた。

「なんとなくわかってたよ。残すのもったいないから、みんなで一緒に食べよ」


 カップルが同じコップでジュースを飲むみたいな。

 みんなで私のヤサイマシマシラーメンの野菜を一緒に食べた。


「美味しいね! このラーメン!」


 みんなごめんって思ったけど、とっても楽しそうに食べてた。



 私、ラーメン屋さんに来ること自体初めてだったけど。

 外で食べるラーメンってこんなに美味しいんだね。


 少し浮かない表情をしていた私に、美紀は気を使ってくれる。

「みんなで食べると美味しいよねっ! 彩香っ!」

「……みんな、ありがとう」


 みんなで食べるラーメン。

 それだけで美味しくって、楽しかった。


 また、みんなで一緒にラーメン食べに行きたいな。


 私、ラーメンがもっと好きになった気がする!

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