ナイスの日

「今日は7月13日です。ナイスの日です」


 学校に行く前に、何気なくつけたテレビからそんな話が聞こえてきた。


 ふーん。そんな日もあるんだね。

 713の語呂合わせで、ナイスか。


「今日の占いは、全員運勢が良いですね」


 ……何それ。そんなこと無いでしょ。


「初めてやる事も全部吉」


 そうなの? ‌本当かな……?

 まぁいいか。良い日って言われると、なんだか良い気分だし。


 はは。ナイスだって。

 占いを教えてくれるキャラクターが『ナイス』って言いながら親指を立ててる。

 可愛いな。


 今日は、いい事ありそう!

 朝の準備も早く終わったし、少し早めに出発しようかな。



 ◇



 最寄り駅まで行く道も、なんだか気分が良い。

 少し早めに家を出ると、少し景色が違う。


 こんな時間だと、犬と散歩する人がいるんだね。

 初めて見る犬ちゃんだ。

 可愛い犬ちゃんだなー。


 そう思ってると、犬が私の方に寄ってきてくれた。


「くんくん」

「あはっ! ‌可愛いー!」


 少ししゃがんで、犬の目線になる。

 愛らしい顔つきのシベリアハスキー。


「くーん」

「おじいさん、この子撫でていいですか?」


 犬を連れてたおじいさんは、笑って頷いてくれた。

 犬はとってもモフオフしてて気持ち良かった。


 みんな良い人!

 おじいちゃん、犬ちゃん、どちらもナイスです!



 私は、犬を存分に撫でてからバイバイってした。


 ちょっと早く出発したから、時間にも心にも余裕があるなー。


 いつもよりゆっくり歩いて駅に向かったが、それでもいつも乗る電車よりも一本早い時間に駅に着いた。



 この電車、いつもすごい混んでるけど一本遅らせても平気な時間だね。


 あれ? ‌宮下先輩が前にいるじゃん。

 せっかくなら一緒に登校したいけど……。

 電車に乗る列、綺麗に並んでるし。

 割り込みはまずいよね……。


 そう思ってると、宮下先輩がたまたま後ろを振り返ってたので、私の存在に気づいてくれた。



 軽く会釈をすると、笑って返してくれた。


 そしたら、宮下先輩は後ろの人に順番を譲り始めた。


「すいません、前どうぞ」

「あ、はい。ありがとうございます」


 順番を譲っていって、私のところまで来てくれた。


 ……先輩、ナイスです。


「よっ! ‌今日早いんだな?」

「はい!」


 まったり喋りたいなーって思ってる矢先に、電車がホームへとやってきた。



「やっぱり、電車満員ですね……」


 これは、次の電車にした方が良いかな……。

 そんなこと思ってると、さっき宮下先輩が順番を譲った人達が、ちょっとずつ電車の奥の方に詰めてくれた。


 ……ありがたい。これは、ナイスです!

 やっぱりいい事あるなー。


「優しい人達だね。乗れそうだから、乗ろうか」

「はい。そうしましょう!」



 電車の中にはいっぱい人がいて、ギューギュー詰めだったけど、みんな気を使って若干の間を開けてあっている。


 ほんの少しの親切。

 それは、全然余計なお世話なんてことはなくって。


 みんながみんなのことを思ってて。

 とってもナイスです!


 私と先輩も2人でドアにくっついて、詰めてくれた中の人のスペースを気にしてあげる。



「宮下先輩、今日ってナイスの日らしいですよ」

「それは良い日だね! ‌みんな良い日だ」


 最初は変な日って思ったけど、宮下先輩は何でも受け入れてくれるんだな。

 宮下先輩こそ、ナイスです。


 ナイスの日って、好きです。

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