ジェットコースター

 晴れ渡る空!

 梅雨はエンドロールを迎えずに帰ってしまったのかも知れないです!

 エンドロールの後にちょっとあるオマケを見ずに!


柚月ゆづきやたらと、楽しそうだな」


 モノレールに揺られながら、雅紀まさき君が話かけてくる。


「そうですよ!やっとやって来ましたね!」

「やって来ましたね」



 駅に到着。

 そのまま、話しながらモノレールのホームを降りる。

 周りにお客さんがいっぱいいるけど、気にせずに雅紀君にしゃべり続ける。


「私がどれだーーーけ楽しみにしてたか!」


 周りの小さい子供もはしゃいでいるけど、私はそれの数倍はしゃいでるだろう。



「そう、いつも布団に入ると3秒もせずに眠れる私なのですが、昨日は3分もかかりました!」


 雅紀君は、それでも短いけど言う隙すら与えずに私は続ける。


「八景島シーパラダイス。色んな遊園地があるけど、やっぱり夏と言ったらここですよ!」

 雅紀は話を遮るのをやめて、うんうんと頷いてくれる。


「広い空、広い海! 青色とほんの少しの白色で! 映えるよー。いい空だよー! とりあえず写真撮ろう!」


 さすがに雅紀君も割って入った。


「楽しいのはわかった。少し落ち着いてくれ。ここはフォトスポットでも何でも無いよ」


 私は笑って返す。


「それでも、久しぶりのデートだもん!」



 雅紀君の腕に絡みついて、自撮りをする。

 雅紀君に寄って寄って。


 パシャッ!



「はははー! ‌楽しい!」

「写真撮ってるだけなんだけどな」


 雅紀君も、口では呆れてるっぽく言うけど、笑いながら自分の携帯でも写真撮ってる。


 さっきよりも、くっついちゃおう。

 ふふふ。


 雅紀君の照れた顔が写真に納まった。

 うんうん。良い思い出だ!



 海に掛かる橋を渡って、遊園地へと入っていく。

 子供連れの家族もいっぱい、カップルもいっぱいいる。

 やっぱり楽しそうにはしゃいでる。


「今日はさ、何の乗ろうか? ‌色々あるんだよここ! ほら、バイキングみたいなやつ!」


 スイカの皮みたいなフォルムで、ブランコみたいに90度くらいの角度から、逆の90度くらいの角度まで揺れている。

 ちょうど真下。ゼロ度のところが1番早くなるのだろう、そこで黄色い悲鳴が聞こえる。


 救急車の音みたい。

 近づいてくる時は高くて、遠くへ行く時は低くなって。

 声を聞いてるだけでも、とっても楽しそう。



「これも、良いね。けど、これはやめておこうぜ……」


 あらら? 雅紀君の顔色が曇ってる?

 あれ? ‌もしかして……、絶叫系苦手なのかな?



「雅紀君は、どんなの乗りたいのかな?」


 雅紀君の下から、上目遣いで聞いてみる。


「俺は景色を見て楽しむので、十分だよ」



 ふーん。

 これは絶対絶叫系の乗り物が苦手なヤツだね。

 無理矢理乗せたら何ハラスメントになるのかな?

 ちょっと乗らせてみたくなっちゃうなー。


 しばらく海沿いの道を歩いていく。


「海綺麗だね!」

「本当! ‌これだけで来れてよかったって思う。俺、景色好きだな」



 ふふふ。

 これも作戦なの。



「雅紀君、景色好きって言ってたから、これ乗ろう!」

「サーフコースター、リヴァイアサン?」


「これ、すっごい綺麗が景色に見えるの!」


 少し抵抗した雅紀君の手を引いて、さーっと乗せた。


「え……、これ、ジェットコースター……じゃん……」

「ふふふ。景色綺麗だからさ!」


 乗せたもん勝ち。


「……ごめん柚月。俺、こういうの苦手で……」


 雅紀君のこういう素直なところ好きだな。

 けど。


「今日は乗りましょ! 私が手を繋いでてあげるから大丈夫!」



 そういうと、すっごい強く手を握ってくる。


「出発ー!」


 カッカッカ……。


 頂上付近まで着くと、綺麗な景色が広がっていた。

 海と空の境目が分からないや。


 雅紀君は……。

 目をつぶっちゃってる。


 ははは。


「ここから落ちるところだよー! 手離さいでね!」


 さらに雅紀君の握る手が強くなった。



 カッカッカッ……。


 ガタン。


 グォーーー!



 一気に落下してく。


「……私、雅紀君のこと離さないからね!」


 私もギュッと、雅紀君の手を握り返した。

 

 私、ジェットコースターって大好き。

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