七夕
今日は七夕。
一年の中で指折りなロマンチックな日。
何でかっていうとね。
バレンタインデーや、ホワイトデーは男子か女子かの片方だけが主役の日なのです。
桃の節句や、端午の節句も、同じで。
父の日、母の日っていうのも分かれてるの。
それに比べて七夕とか、クリスマスは団体で祝える日だよね。
それで、クリスマスって本当は家族で過ごす日。
お正月もそう。
それならばだよ。
七夕っていうのが、実は一番カップルにお似合いの日なんだよ。
織姫様と彦星様が会う日だったりもするしね。
七と七。
どちらも同じ数なんだよ?
ぴったり男女で釣り合ってるからとーってもいいよね。
どっちが上とかじゃないんだよ。
どっちも対等な関係。
けど、何と言っても一年に一回だけしか会えないっていうところがロマンチックだよね。
「そうだよね!」
横にいる
私の話、ちゃんと聞いてたかな?
「話しかけてるなら、こっちを向いて喋って欲しいって。前から言ってるのに直らないな……」
私と和也は、期末試験が近いから喫茶店で勉強をしてる。
窓からはスカイツリーも見える穴場な喫茶店。
さっきから和也はずっと何か計算してる。
「よし。計算で来た」
なんだろう?
「星の寿命から考えると、星にとっての一年っていうのは実は短いんだ」
「へえ?」
「星の寿命は、100億年ほどあると言われてる。だから一年に一回会えるってことは、死ぬまでに百億回会ってるんだ」
「はい?」
「これを人間の寿命換算すると、実は1秒間に3回はあってる計算になる。これは、ずーっと会ってるようなものなんだよ」
「へぇー……、そうなんだ? それじゃあ私達より会ってるんだね」
和也はノートに目をやって真面目そうな感じで答えてくる。
「そうなるね」
「ちょっとうらやましいね」
「そうかもね」
「え? それって、私ともっと会いたいってこと?」
「そうかもね」
「……話ちゃんと聞いてるの?」
「……」
黙っちゃった。まぁいいか。
「星に願いをかけるって不思議だよね。誰が叶えてくれるんだろうね。織姫様かな? 優しそうだし」
和也は、目線を私に戻してくれた。
「七夕ってお願いを叶えてくれるわけではないんだって。願い事はあくまで宣言みたいなもので、自分自身で叶えるものなんだよ」
また、どこかから得た雑学を教えてくれる。
「なんかそれって、全然ロマンチックじゃなーい」
もうちょっと頭を柔らかくして欲しいんだよね。
自分で願いを叶えるなんて、ストイックにもほどがあるでしょ。
「じゃあさ、和也は何を願うの?」
「秘密」
「なにそれ、私に宣言してよ。私今日織姫様ー。願い聞くよー?」
私がそんなことを言うと、和也は恥ずかしそうにしながら宣言してくれた。
「……お前と、もっと一緒に入れますよにって」
恥ずかしがって言ってるの可愛いな。
ふふ。
「何それ何それ。もっと詳しくー!」
さらに和也は顔を赤くしてる。
「どうして私と一緒にいたいの?」
「……一緒にいて楽しいから」
「ふふ。願い叶うと良いね!」
「叶えるんじゃなくて、自分で叶えるんだよ」
和也は健気だなー。
そういうところ好きだな。
「じゃあ、これからもよろしくね!」
私から和也へ宣言。
ニコッて和也に微笑みかけた。
そしたら、もっと照れて目線逸らされちゃった。
あはは。
私も自分の願いは、自分で叶えよう。
和也と、もっとずっと一緒に入れますようにって願い。
七夕ってやっぱりロマンチックだよ。
こんな日を作ってくれた織姫様と彦星様に感謝の日だね。
私、七夕ってやっぱり好き。
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