学校生活、何と言ってもお弁当タイムが何よりの癒しだよね。

 このために私は毎日頑張ってる。


 それに、今日は特別。

 お弁当のデザートとして梨を持ってきたんだ。

 私、果物で梨が一番好きで。

 梨のシャリシャリしてるところが好きなんだ。


 タッパーの蓋を開けて、梨につまようじを刺して食べるんだ。

 この、刺すときの感触から好き。


 サクッ。



 この硬さ。



 はぁー……。良い……。


 硬いからと言っても、梨はとっても瑞々しい。

 梨汁がしたたりそう。


 たまらないです……。



 シャリ。


「……ああ、おいしい」



 シャリ、シャリ。


「私、梨のシャリシャリする食感って好きなんだー」



 お弁当を一緒に食べるさとし君は、浮かない顔をしていた。

 私の梨を見る目に嫉妬でもしてるのかな?


 シャリシャリしてるの分けてあげようかな。

 ふふふ。



愛梨あいりってそうなんだ。じゃあ俺と合わないかもな」


 突然の宣言に私の思考は追いつかなかった。

 ゆっくり首を傾けながら、落ち着いて言葉の意味を考えようともう一口梨を口へと運ぶ。



 シャリ。



「聡君、今のはどういう意味かな?」


「そのままの意味だよ」


 私が理解できないでいると、聡君もデザートのタッパーを取り出した。

 そのタッパーを開けると、私の今食べているものと同じフォルムが出てきた。


 梨。


 聡君もデザートに梨を持ってきているようであった。

 梨持ってきてるのに、嫌いなの?


 そう思っていると、聡君は自分の梨を食べた。



 フニャ。


 梨とは思えない音が聞こえる。



 フニャ、フニャ。


「俺は柔らかい方が好きだから」



 衝撃の告白を聞いた。

 柔らかい梨が好きと……。


 そうなのか。

 聡君は柔らかい梨派だったのね……。


 けど、私は引けない。

 梨はやっぱりシャリシャリする方が……。



 二人で無言になってしまった。

 自分の好きな梨を食べている。


 シャリ。


 フニャ。



「……二人とも喧嘩ですか?」

 どこからともなく、おせっかいやきな美月がやってきた。


「聞こえてたよ? 梨の硬さのことで言い合ってどうしたの?」


 私と聡君は、美月の方を見ながら梨を食べ進める。

「……だって、私。シャリシャリの方が良いもん……」

「俺だって、柔らかい方が好きだし……」



 美月は、二人の意見を聞いてうんうんと頷いている。

「梨の良さ、お互いに認め合おう。どっちも美味しいよ。お互いに食べあってみなよ」


 私と聡君は戸惑ってしまう。


「ほらほら、まずは自分の梨につまようじを指して」

 私と聡君は、言われるがまま。


「そしたら、お互いの口に向かって『あーん』ってして」


「「あーん」」


 パクッ。


 聡君の梨、しっかりと冷やされていて。

 柔らかい噛み応えなのに、あっさりした甘さ。


 ……美味しいかも。


 聡君もまんざらでもない顔をしている。



 そんな私たちを見て、美月は満足そうに自分の席へと戻っていった。


「……聡君、柔らかい梨も美味しいね」


 そういうと、聡君も微笑んでくれた。


 美月、ありがとう。

 仲直りできたよ。


 シャリシャリ。

 フニャフニャ。


 どんな梨でも、やっぱり梨は美味しい。

 私、梨が好き。

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