海開き

 涼しい電車に揺られて街中を走る。


 ガタンゴトンと揺れて。

 隣にいる彼の肩に頭がコツン。



 チラッと彼のことを見ると、彼はよそ見して気にしないふりをしてる。

 ……このままでいるのも良いのかもな。


 逆向きに揺れたので、強制的に彼の肩から離れてしまった。

 ……うーん。残念。



 彼とは逆隣に、私の親友の光里ひかりがいる。

 今の光景を見ていたらしくて、ニヤニヤしてこちらを見てきた。


「……いいでしょ。ちょっと揺れたんだもん……」

「いえいえ、ご自由にどうぞ。付き合いたてのカップルは違いますねー」


 そういって、光里は逆隣にいる自分の彼の方を向いた。

 首を傾けるジェスチャーをしあって、私のことをからかっている。


 今日は、私と光里とその彼氏たちの4人で遊びにきた。

 いわゆるダブルデートっていうやつ。



 ガタンゴトンと揺れる電車。

 電車の中から見える空は今日も真っ青。

 輪郭をくっきりさせた白い雲が浮かんでいる。


 街中の景色が段々と変わっていき、一度だけパッと開けた場所がある。

 そこから、一瞬だけだが海が見えた。

 どこまでも続く青い海。


 私はそれだけでテンションが上がってニヤけてしまった。

 光里との会話で、話のオチでもないところで笑ったことがバレてしまったらしい。


夏穂かほってさ、海好きだよね。私の話よりも」

「……てへへ。バレちゃったか。もうすぐ着くね」



 待ちに待った海開きの日だった。

 私がどうしても行きたいって、他の人達にもついてきてもらったんだ。


 海ってどこまでも続くように見えて、好き。


 季節によって違った色を見せる海。

 特に夏の海って青い色をしていて好きなんだ。


 空の青さに負けないくらい青く輝いていて。

 とっても綺麗。


「海って、素敵だよね」

「夏穂、ここにいるみんなもそう思ってるよ!」


 ついてきてくれてる3人が私を見て、うんって頷いてくれた。


 ……熱い絆に感謝だよ、本当に。




 ◇



 電車を降り、竜宮城のような駅を出ると、目の前には海が見えた。



 これは……。

 さいこうだ……。



 目の前は青一色。

『夏』という景色が広がっている。

 ……これは、見とれてしまうよ。



 私が立ち止まっていたら、光里たちは私を追い越して先へと進んでいった。


「夏穂ー、置いて行っちゃうよー? 早く早くー!」


 光里が振り返って手招きをしてくる。

 彼氏たちは二人で泳ぎのフォームを見せ合って、はしゃいでいた。


 私、本当に海に来たんだ。



 最近流行の病があって、外に遊びに行くのも難しかったりして。

 こんな風にみんなで気軽に遊びに来れる夏が、私にも来たんだ……。



「待ってよー!」


 なんか青春の一ページを満喫しているみたい。

 ふふふ。

 今日は目一杯、遊ぶぞー!



 海って好き!

 海開きって、最高に好き!

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