三角関係
「一年も残すところ半分ですね」
揺れるバスの中で後輩の
バスの一番後ろの座席。
バスの中が良く見える。
私たち以外には誰も乗っていない。
休日に、山の中の高校まで来るのなんて部活動をしている生徒ぐらいだった。
「そうですね。どうしたんですか
いつも一緒にいる後輩。
私をいつでも慕ってくれている。
「なんていうかさ、一年って短いよね」
窓の外は、道路と森が広がっている。
木以外に何にも見えない道。
「私高校二年生じゃん、高校生がちょうど半分終わっちゃうんだよね。そう思うとちょっと切なくって」
私がそう言うと、美咲はちょっと眉にしわを寄せて反論してきた。
「静香先輩、正確にいうと1年と3か月です。高校生は4月始まりなのです」
……あ、そうか。
美咲は可愛い笑顔を向けてくる。
「まだ1年9カ月も一緒にいれますよ」
ずっと私と一緒にいる気なのかな。
可愛い後輩。
高校へ行く途中にもバス停はある。
いつも誰もいないから、通り過ぎているけれど。
今日はそのバス停で停車した。
こんなところで誰が乗ってくるかと思ったら、一つ上の
前から乗車して、私たちの方をちらっと見るとそのまま前の方の席に座ってしまった。
彩音先輩はカッコいい。
美咲とつるむ前は、私は彩音先輩とばかり一緒にいた。
どこへ行くにも一緒にいて。
美咲が部活に来たあたりか、段々と彩音先輩から離れてしまって。
あの時の気持ちは、どこへ行ったんだろうな……。
彩音先輩を見てから、美咲への返事がどこか上の空になってしまった。
「先輩、私といるのつまらないですか?」
「……いや、そんなことは無いけど」
前の方へと目をやる。
彩音先輩は一人でスマホをいじっている。
美咲も私の視線が気づいて、彩音先輩の方を見た。
「やっぱり彩音先輩のことが気になるんですね?」
美咲は知っていた。
私が彩音先輩を昔好きだったことを。
美咲は動いてるバスの中を歩いて、彩音先輩のところまで行った。
「彩音先輩。
ちょっとなにやってるんだ、美咲は……。
「好き人同士なら、なんで二人とも離れていくんですか」
そんな美咲の一言に、私と彩音先輩は目を見合わせてしまった。
彩音先輩は私への視線を美咲へと戻すと、ぷっと噴出した。
「良い後輩だね。私も好きだな、こういう後輩。昔の
そう言われても何もたじろがずに美咲は話した。
「正々堂々勝負です!」
「ははは。そういうの良いね」
バスは揺れて。
高校に着くまで、まだ半分以上時間がある。
この後どうするんだよ……。
彩音先輩は、私たちの座っていた一番後ろの席へと着てくれた。
美咲が端っこ、私が真ん中、私の隣に彩音先輩。
私を挟んで、美咲と彩音先輩が私について議論している。
私の『こういうところが良い』だの、『こういうものが好きだ』だの。
……これからは三人で仲良くしたいな。
これが三角関係ってやつなのかな。
綺麗な正三角形じゃないかもだけど。
こういう三人の関係も良いなって思えた。
後輩と、私と、先輩と。
この関係が好き。
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