パフェ

 黒い木目が綺麗なテーブル。

 椅子も同じような黒色の木目をしている


 床は白い大理石みたい。


 壁は少し雰囲気が違っていて。

 まさにフルーツといったように、緑色、赤色、青色、オレンジ色。

 そんな四角くて透明なオブジェが並べられている。


 この空間にいるだけでも幸せ。


「ああー、幸せ……」


 思わず声が漏れ出る。

 前の席に座るれんくんが反応してくれる。


「ずっとニコニコしてるね」


「当たり前なのです! ‌ずっと来たかったんですよココ!」


 蓮君に連れられてきたフルーツショップ。

 今から出てくるもの目当てで来てい。

 まだ届かないけど、期待して待ってるだけでとっても幸せ。



 すると、店員さんがやってきて、手に持っていたグラスを机に置いてくれた。


「お待たせしました」



 黒いウェイトレスの制服ってだけでもカッコいい。

 さり気なく、グラスの向きままで調整してくれる。


 ……はぁ。この幸せ空間何だろう。



 店員さんが帰って行ったのを確認して、蓮くんに声をかけた。


「まずは、写真撮っていい?」

「どうぞ」


 ありがとうって微笑んで、スマホのカメラ越しに机の上を覗き込む。



 机の上に置かれたグラス。

 その中には、白いクリームがくるくると螺旋を描いていて。

 それがグラスの上を突き抜けている。


 クリームの周りには、イチゴがたくさん。


 ごろっと大きく切られていて。

 それで断面が見えるように並べられている。

 断面はスカスカなイチゴじゃなくて。

 ずっしり詰まってる時の、あのイチゴ。


 そして、いちごの隣にはスポンジ状のケーキがポンポンと置かれている。

 きっと、これだけ食べても甘くて美味しいんだよ。



 これは、見てるだけでも美味しい。


「とってもい綺麗だよ……」


 パシャ。



「はぁ」


 違う角度から見て。


 パシャ。




「はぁ」


 これを数回繰り返した。



 蓮くんもさすがに呆れた感じになってしまっていた。


「幸せそうで良かったけど、食べようぜ」

「……はい」


 やりすぎちゃったか。

 蓮くんの方を向いて、手でごめんってジェスチャーをする。

 許してくれたかな?

 蓮くんも甘いからきっと許してくれたはず。



 さて、どこから食べたらいいのか。

 上のクリームかな?

 横に着いてるいちごかな?

 はたまたスポンジケーキか。


 悩みどころです。



「俺、先食べちゃうよ?」

「ああ、待って待って。私が最初に食べたい!」


 と言ってるそばから、蓮君は上のクリームを長いスプーンですくって、私の方へと差し出した。

 

「パフェの本体ってここだろ?」


 私は一生懸命に首を横に振った。


「蓮君、パフェは全て揃ってこそパフェなのです。パフェの語源はパーフェクト。一つも欠けちゃいけないのです」


 そう言ってて気がついた。

 どこから食べるかじゃない。

 全部をいっぺんに食べればいいんだ!



 蓮くんからスプーンを奪い取り、クリームの上にイチゴとスポンジケーキを乗せた。


「これで、パーフェクトなのです!」


 蓮君は呆れを通り越して、笑っていた。


「ははは。そんなにパフェが好きなんだな?」


「はい! ‌蓮君の次に大好きです!」

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